ベトナムで長く暮らしていると、身近な人の死に直面することもあるかもしれません。
全くそんな経験をせずにいられることが1番良いことですが、万が一急に葬式に呼ばれた際にはしっかりとベトナムの文化を理解した上で参加したいものです。
今回はベトナムの葬式に参加することになった方に向けて、知っておくと便利なベトナム文化、葬式のルールなどをお伝えします。
※本記事はベトナム在住の筆者が現地ベトナム人に聞いた情報、インターネットで調べた情報をもとに執筆しております。
ベトナム人の宗教
ベトナムは日本と同じように無宗教がトップを占める国です。
日本も同じですが、無宗教というのは、全く宗教を持たないというわけではなく、様々な宗教のイベントや慣習を受け入れている、多宗教という意味です。
多宗教ではあるものの、冠婚葬祭では日本と同じように仏教のやり方で行われることが主流です。
ただし、日本よりもヒンズー教やキリスト教の方の比率が高いと言われていますので、故人の宗教によって様々なスタイルがあると考えておいた方が良いでしょう。
ベトナムの一般的な葬式の流れ
ベトナムの一般的な葬式では、故人が亡くなってから3日間続けて葬式が行われます。
場所は故人の自宅で行われることが最も多く、家の外に白いテントを出して、椅子を並べて食事をしている風景をハノイの街中でも時々見かけます。
近年都市部では、自宅以外の会場や寺院で行われることも増えています。
3日3晩、食事を切らさないようにし、会場を綺麗に飾ったりして、日本に比べると少し楽しく弔うスタイルが主流です。
南部の方ではカラオケ大会のように盛り上がることもあるようです。
弔問する場合にはこの3日間のうち、いずれかに参加すれば良いと言われています。
葬式ののち、故人の遺体は霊柩車で運ばれ、お墓に埋葬されます。
ベトナムでは今まで土葬が主流でしたが、近年都市部を中心に火葬が主流になってきているようです。
ベトナムは南北に長い国なので、葬式には地域による文化の違いが多くあります。
地域によって、泣いて悲しみに満ちた雰囲気であることもあれば、笑顔で楽しく過ごす場合もあります。
葬式に参加することになった場合には、前もって一緒に参加する人などにスタイルや宗教を確認しておくことが大切です。
葬式に呼ばれたら?
葬式に呼ばれた際に気になるのが服装や決まりでしょう。
人が亡くなった時に故人やその家族に色々質問をするのは、なかなか気が引けてできないものです。
そんな時、この記事の内容をぜひ参考にしてください。
服装
日本では喪服を着るのが一般的ですが、ベトナムには喪服のようなものは基本的には存在しません。
故人の家族など、葬儀の関係者は全身真っ白の装束を着ていることが多いです。
また、白いハチマキも身につけています。
葬式に参加する場合には、日本のように黒や紺の地味で暗めの服装をしていけば問題ありません。
スーツでの参加だと間違いありませんが、Tシャツやジーンズなどでも暗めの色、派手な装飾がなければ着て参加しても大丈夫です。
女性は露出を抑えた暗めの色のワンピースなどが一番安心でしょう。
アクセサリーはつけないのが一般的です。
香典
香典の文化は日本と同じようにベトナムにもあります。
会社関連では50万ドンが相場です。
あまり近しい関係でなければ、30万ドンでも失礼にはならないでしょう。
日本と同じように、会場に着いたら名前を書いて香典を最初に渡す形式が多いようです。
雰囲気
前にも述べましたが、ベトナムの葬式は各家庭ごとに雰囲気が大きく異なります。
北部は喪に服し、涙をたくさん流して悲しみに満ちた葬式をするのが一般的だと言われています。
それに対して南部は、泣くことは故人を成仏させる妨げになると考える人が多いので、楽しい雰囲気の葬式になることが多いようです。
雰囲気は行ってみないとわからない部分が多いですが、様々なパターンがあるということを事前に知っておくことで、当日慌てないで対応ができるでしょう。
当日の流れ
葬式に呼ばれたら、まずは日本と同じように香典を渡して受付をします。
名前を呼ばれたら祭壇のほうに進み、線香を立てます。
この時、回りの人を見て真似しても良いですが、ベトナムの方はひざまずいて大きく上半身を屈める跪拝をする方が多いです。
日本人はなかなかしない祈り方なので、抵抗がある場合には日本と同じように礼拝すれば問題ありません。
この一連の流れが終わると、他の参列者と食事やお菓子を食べて談笑を楽しみます。
ほとんど日本の葬儀と流れは同じですが、宗教によって流れは異なります。
楽隊が楽器を奏で、故人との最後のお見送りの時にみんなで歌を歌うことも多いそうです。
この場面は日本ではなかなかない賑やかさなので、初めて見る人はきっと驚くことと思います。
ベトナムの葬式でのタブー
ベトナムでは、赤と金がおめでたい時に使われる色とされています。
そのため、服装や香典の封筒には赤と金を使わないように注意しましょう。
また、香典のお札も赤い色の5万ドン札や20万ドン札は避け、青や緑の50万ドン札や10万ドン札を使用するのが最適です。
ベトナムで人が亡くなった際には、家中の鏡を全て新聞紙で覆うという慣習もあるそうです。
これは、鏡には霊が寄り付くと信じられているので、故人の霊やその他の霊が集まってこないようにという意図で行われている慣習です。
また、妊婦や乳幼児、病気の方は葬式に参加するべきではないという考えもあるようです。
この理由は、免疫力の弱い人は葬儀の後に体調を崩したりしやすいからだということです。
まとめ
ベトナムの葬式が日本とどう違うのか、理解できたでしょうか。
国は違えど、やはりアジア、仏教徒がメインの国ということもあり、日本と共通する点も多くありますね。
葬式に参加するのは、突然のことであることがほとんどです。
せっかく呼んでいただいたのなら、できるだけ事前に相手の文化を理解して参加したいものです。
事前に今回の記事を読んで予習をしておくことも大切ですが、一番大切なのは故人を偲ぶ気持ちです。
その想いはきっと万国共通なので、しきたりやルールに捉われすぎず、故人を偲ぶ気持ちを持って参加しましょう。
それが伝われば、外国人としてしきたりなどが分からない場面があっても、故人やその家族に失礼にあたることはないはずです。
今回の記事の内容が、ベトナムの葬式に参加することになった方にとって参考になりましたら嬉しいです。