ベトナムの祭り完全ガイド:現地在住者が教える魅力と楽しみ方

ベトナムは年間を通じて様々な伝統的祭りが開催される国です。

私はベトナムに移住して4年目になりますが、毎年新しい発見があり、祭りを通じてベトナム文化への理解が深まっています。

この記事では、現地在住者の視点からベトナムの代表的な祭りの魅力や楽しみ方をご紹介します。
旅行者はもちろん、ベトナムへの移住を考えている方にとっても、祭りを知ることは現地の文化や生活を理解するための大きな手がかりになるはずです。

2024年ベトナム祭りカレンダー(主要祭り)

祭り名 旧暦 2024年の日程
(新暦)
2025年の予想日程
(新暦)
開催地
テト(旧正月) 1月1日〜7日 2月10日〜16日 1月29日〜2月4日 全国
香り山祭り 1月6日〜3ヶ月間 2月15日〜5月頃 2月3日〜5月頃 ハノイ近郊
リム祭り 1月13日 2月22日 2月10日 バクニン省
ドンキー村水牛闘技祭り 2月4日 3月13日 3月3日 ハイフォン
フンキング廟祭り 3月10日 4月18日 4月7日 フートー省
バーチュー祭り 3月15日〜17日 4月23日〜25日 4月12日〜14日 ハノイ近郊
ポンボ祭り 4月7日〜9日 5月14日〜16日 5月4日〜6日 ナムディン省
フエフェスティバル 6月7日〜12日 6月7日〜12日 フエ
カットバ水上祭り 6月12日 7月16日 7月16日 ハイフォン
中元節 7月15日 8月18日 8月18日 全国
中秋節 8月15日 9月17日 9月17日 全国
オクオムボク祭り 10月15日 11月15日 11月15日 メコンデルタ
カオダイ教大祭 11月15日 12月15日 12月15日 タイニン省

テト(旧正月):1月〜2月

ベトナム最大の祭りがテト(Tết Nguyên Đán)です。
日本の正月にあたるこの期間は、ベトナム人にとって最も重要な家族の行事です。

通常3〜7日間の祝日となり、多くの人が故郷に帰省するため、交通機関は大混雑します。
私の知人ベトナム人たちも1〜2週間前から準備を始め、家の大掃除や桃の花(北部)や黄色い梅の花(南部)を飾っていると話しています。

香り山祭り(Hương Pagoda Festival):2月〜5月

ハノイから約60kmに位置する香り山(Chùa Hương)では、旧暦1月6日から3ヶ月間にわたり香り山祭りが開催されます。この祭りでは、洞窟寺院への巡礼とボートツアーを楽しむことができます。

私が訪れた際は、山々に囲まれた美しい景色の中でボートに乗り、地元の人々と一緒に祈りをささげる神聖な雰囲気に感動しました。

フンキング廟祭り:4月頃

ベトナム建国の父とされるフン王を祀るフンキング廟祭り(Giỗ Tổ Hùng Vương)は、毎年旧暦3月10日に開催されます。特に北部フートー省のフンキング廟では盛大な儀式が行われ、全国から多くの人々が訪れます。

この日は国民の祝日となっており、ベトナム人のアイデンティティを象徴する重要な祭りです。

バーチュー祭り(Đền Bà Chúa Kho):4月頃

バクニン省にあるバーチュー寺院での祭りは、商売繁盛や金運を祈願する人々で賑わいます。旧暦3月15日から17日に行われ、「財宝の女神」を祀っています。

現地在住者として興味深いのは、多くのビジネスオーナーがこの祭りに参加し、その年の商売の成功を祈ることです。

中元節(Tết Trung Nguyên):8月頃

旧暦7月15日に行われる中元節は「幽霊の日」とも呼ばれ、亡くなった先祖や家族のない霊を供養する日です。各家庭や寺院では食べ物や紙のお金を供え、先祖の霊を迎えます。

この日はベトナム人の間で「外出を控える日」とされていますが、私は友人に誘われて寺院での儀式に参加したことがあります。

中秋節:9月〜10月頃

旧暦8月15日に行われる中秋節(Tết Trung Thu)は、子どもたちのための祭りとして親しまれています。街中には色とりどりのランタンや獅子舞が現れ、子どもたちは月餅を食べながら楽しみます。

中秋節:ハノイのHangMa通りの様子

ホーチミン市のチョロン地区(中華街)では特に賑やかな雰囲気を味わえます。

地域の祭り

上記の全国的な祭りの他に、各地域には独自の祭りが数多く存在します。例えば、フエの宮廷音楽祭やダナンの国際花火大会など、地方都市ならではのイベントも見逃せません。

ベトナム文化スポーツ観光省のイベントカレンダー(https://vietnamtourism.gov.vn/english/)を確認すると、訪問時期に合わせた祭りの情報を得ることができます。

テト(旧正月):ベトナム最大の祭りの過ごし方

テト前の準備と風習

テトの1〜2週間前になると、街中がお祭りムードに包まれます。各家庭では大掃除が行われ、新しい服を購入したり、お供え物を準備したりします。
ベトナムに住んでいて特に印象的なのは、オフィスや家庭で「菜花(Cây mai:南部)」や「桃の花(Hoa đào:北部)」を飾ること。これらは幸運を呼ぶとされています。

南部の花イメージ

北部の花イメージ

また、テト前には「Tất niên(タットニエン)」と呼ばれる年末の食事会が会社や友人同士で開かれます。この時期はレストランの予約が非常に取りにくくなるので早めの予約をおすすめします。

テト期間中の過ごし方

テト当日は「初詣」にあたる「Xông đất(ソンダット)」という風習があります。新年最初に家を訪れる人が、その年の運気を左右すると信じられているため、縁起の良い人を選んで招くことが一般的です。外国人の私が「初客」として招かれることもあり、光栄に感じています。

テト期間中は家族と過ごすのが基本ですが、2〜3日目からは友人宅を訪問したり、寺院に参拝したりする習慣があります。ハノイやホーチミンなどの大都市では、多くの店が閉まりますが、観光客向けのエリアでは営業している店舗もあります。

テトを楽しむためのヒント

テト期間は交通機関が混雑し、物価も上昇する傾向があります。ベトナムで暮らしていると、この時期は早めの準備が必要だと実感します。特に長距離バスや電車、飛行機のチケットは1〜2ヶ月前に予約することをおすすめします。

また、テト期間中に訪問者にお年玉「Lì xì(リーシー)」を渡す習慣があります。新札の小額紙幣を赤い封筒に入れて用意しておくと喜ばれます。私も毎年、知人の子どもたちやアパートのスタッフにお年玉を用意しています。

ベトナム観光総局のテト関連情報(https://vietnamtourism.gov.vn/english/lunar-new-year)も参考になります。

地域別:ベトナムの特色ある祭り

北部の伝統的な祭り

北部では農耕文化に根ざした伝統的な祭りが多く開催されます。その中でも「リムフェスティバル(Lim Festival)」は特に有名で、旧暦1月13日にバクニン省で開催されます。男女が歌を掛け合う「クアンホ民謡」が披露され、恋愛や結婚に関する歌が歌われます。

「香り山祭り(Hương Pagoda Festival)」は旧暦1月6日から3ヶ月間続く長期の祭りで、洞窟寺院へのボート巡礼が特徴です。信仰と自然美が融合した素晴らしい体験ができます。

また、ハノイ近郊のソンタイ地区で行われる「ジオン祭り(Giong Festival)」はユネスコ無形文化遺産に登録されており、中国の侵略から国を救った伝説の英雄を称える祭りです。巨大な紙の馬や武器を持った演者たちによるパレードは圧巻です。

中部の王朝文化を伝える祭り

ベトナム中部、特にフエでは王朝時代の伝統を今に伝える祭りが開催されます。2年に一度開催される「フエフェスティバル」では、グエン朝の宮廷音楽や伝統芸能が披露されます。私が参加した際は、香江(フオン川)でのボートパレードや夜の幻想的な光のショーが印象的でした。

「アムホイ祭り(Am Hoi Festival)」は、クアンナム省で開催される伝統的な漁村の祭りで、漁師たちが豊漁と海上安全を祈願します。カラフルな漁船のパレードと海の幸を使った特別料理が楽しめます。

ホイアンでは毎月旧暦14日に「ホイアンの灯りの祭り」が開催され、電気を消して灯篭だけで街を照らす幻想的な雰囲気を楽しめます。観光客も多いですが、地元の人々の信仰行事としての側面も大切にされています。

南部のカラフルな祭り

南部では少数民族の文化や宗教が混ざり合ったユニークな祭りが見られます。メコンデルタ地域のクメール系住民による「オクオムボク(Ok Om Bok)」は、旧暦10月15日に月に感謝する祭りで、ボートレースや伝統舞踊が披露されます。

ホーチミン市近郊のタイニン省では、カオダイ教の「大祭(Đại lễ)」が年に4回開催されます。カラフルな衣装を身にまとった信者たちによる儀式は、独特の宗教文化を体験できる機会です。

「バヴィット祭り(Bà Vít Festival)」はチャム族の伝統祭りで、ニントゥアン省で旧暦7月に開催されます。チャム族の伝統舞踊や音楽、民族衣装のファッションショーなど、少数民族の文化を知る貴重な機会です。

現地在住者おすすめの穴場祭り

観光ガイドにはあまり載っていませんが、ハノイ郊外のドンキー村の水牛闘技祭り(旧暦7月)や、ダナン近郊のアンバン漁村のクジラ祭り(旧暦2月)などは地元の人々の生活に根ざした祭りとして興味深いものです。

「ポンボ祭り(Phủ Dầy Festival)」はナムディン省で旧暦3月に開催される母神信仰の祭りで、「レンドン(霊媒儀式)」と呼ばれる独特の儀式が行われます。カラフルな衣装を身にまとった霊媒師が、様々な神霊を呼び出す様子は非常に興味深いものです。

「カットバ水上祭り(Cát Bà Fishing Festival)」はハロン湾近くのカットバ島で旧暦6月に開催され、漁師たちによるボートレースや海の幸を使った料理コンテストなど、海洋文化を体験できる祭りです。

これらの小規模な祭りこそ、ベトナムの伝統文化を肌で感じられる貴重な機会だと思います。

ベトナム文化遺産局の伝統祭りリスト(http://dsvh.gov.vn/danh-muc-di-san-van-hoa-phi-vat-the-quoc-gia)では、公式に認定された伝統祭りの情報を確認できます。

 祭りで体験するベトナム料理と伝統芸能

祭り限定の特別料理

ベトナムの祭りには、その時期だけに食べられる特別な料理があります。テトには欠かせないのが「バインチュン(Bánh chưng)」「バインテト(Bánh tét)」。もち米と豚肉、緑豆を竹の葉や蓮の葉で包んだ料理で、ベトナムの幼稚園で作り方を教わったこともあります。

準備から調理まで一日がかりの作業ですが、家族で作る過程も祭りの楽しみの一つです。

中秋節には「バインヌオン(Bánh nướng)」「バインデオ(Bánh dẻo)」と呼ばれる月餅が食べられます。ベトナム式月餅は中国のものとは異なり、緑豆ペーストや塩漬け卵黄を使ったものが特徴的です。

豚の形の月餅も子供たちに配られたりします

「ヌンチャム祭り(Nùng Chạm Festival)」では、少数民族ヌン族による「コムラム(Cơm lam)」という竹筒で蒸したもち米が振る舞われます。山の香りがする独特の味わいが楽しめます。

祭りで見られる伝統芸能

祭りでは普段見ることのできない伝統芸能が披露されます。水上人形劇(Múa rối nước)は北部の農村で発展した芸能で、水面を舞台に人形を操る独特の芸術です。タイビン省やニンビン省の祭りでよく上演されています。

「トゥオン(Tuồng)」は中部地方の古典演劇で、カラフルなメイクと衣装が特徴です。フエフェスティバルでは宮廷版のトゥオンを鑑賞することができます。

「ハットチェオ(Hát chèo)」という民間歌劇や、「カチュー(Ca trù)」という古典音楽もユネスコ無形文化遺産に登録されており、特別な祭りの際に鑑賞する機会があります。

南部メコンデルタの「ドンカー(Đờn ca tài tử)」は即興性の高い民謡で、オクオムボク祭りなどで演奏されます。地元の人々と一緒に歌を楽しむことができるのも魅力です。

祭りでのマナーと注意点

ベトナムの祭りに参加する際は、いくつかのマナーを知っておくと良いでしょう。寺院や廟を訪れる場合は、肩と膝を覆う服装が望ましいです。また、靴を脱ぐ場所では必ず靴を脱ぎましょう。

祭りの写真撮影は基本的に許可されていますが、儀式の最中や祭壇に向かって直接撮影するのは避けるべきです。私も最初は知らずに撮影して注意されたことがありました。

お供え物や寄付をする際は、両手で渡すのがマナーとされています。祭りによっては混雑するため、貴重品の管理には十分注意しましょう。

外国人が楽しむためのベトナム祭り参加ガイド

祭り情報の入手方法

ベトナムの祭りの正確な日程を知るには、陰暦(旧暦)と陽暦(新暦)の対応表を確認する必要があります。ベトナム在住者の間では「Lich Van Nien」というアプリが人気で、祭りの日程も確認できます。

私の家のメイドさんもよく使っているのを見かけます。

また、各省や都市の観光情報センターでも祭りの情報を入手できます。ハノイやホーチミン市の外国人向け情報誌「The Word」や「AsiaLife」にも祭りの特集が掲載されることがあります。

ベトナム航空の公式サイト(https://meetsvietnam.vietnamairlines.com/staffcolumn/traditionalfestivalinvietnam/
政府観光局
https://vietnam.travel/jp/things-to-do/top-10-festivals-holidays-vietnam
でも、主要な祭りの情報を確認できます。

祭り期間中の交通・宿泊のアドバイス

大きな祭りの期間中は交通機関が混雑し、宿泊施設も予約が取りにくくなります。特にテトの時期は国内移動が非常に困難になるため、移動を避けるか、少なくとも2ヶ月前までに予約することをおすすめします。

地方の小さな祭りに参加する場合は、公共交通機関が限られていることがあります。タクシーアプリ「Grab」や「Be」を利用するか、現地のツアー会社を通じて参加するのも一つの方法です。バイクで地方の祭りに出かける際には、道路状況が悪い場所もあるので注意が必要です。

香り山祭りやフンキング廟祭りなどの大規模な祭りでは、一日で10万人以上の参拝者が訪れることもあります。こうした人気の祭りに参加する際は、早朝に出発するか、平日を選ぶと比較的混雑を避けられます。

外国人向け祭り体験ツアー

言葉の壁や文化の違いが心配な方は、外国人向けの祭り体験ツアーを利用するのも良いでしょう。ハノイの「Hanoi Free Tour Guidesホーチミン市の「Saigon Free Walking Toursでは、学生ボランティアが英語で祭りの案内をしてくれます。

有料ツアーでは「Oxalis Adventure」や「Buffalo Tours」が伝統的な祭りへの参加ツアーを提供しています。「Indochina Junk」ではハロン湾の漁村祭りに参加できるクルーズツアーを実施しています。私の経験では、こうしたツアーを利用すると祭りの背景にある文化や歴史について詳しく知ることができ、より深い体験ができます。

祭りでの交流のヒント

ベトナムの祭りは地元の人々と交流する絶好の機会です。簡単なベトナム語の挨拶「シンチャオ(Xin chào)」やありがとうの意味の「カムオン(Cảm ơn)」を覚えておくと喜ばれます。

祭りで出会った地元の人に招待されて家庭料理をご馳走になったり、一緒に踊ったりする経験は貴重な思い出になります。ベトナム人は外国人に対して好奇心旺盛で親切なので、笑顔で接すれば自然と交流が生まれるでしょう。

祭りの際に地元の人々が身につけている伝統衣装「アオザイ」や民族衣装に興味を示すと、着付けを手伝ってくれたり、記念写真を撮ってくれたりすることもあります。私自身、少数民族の祭りで民族衣装を着せてもらい、現地の人々と一緒に踊った経験は忘れられない思い出です。

ベトナムの祭りを通じて、観光だけでは知ることのできない文化や人々の暮らしに触れることができます。ぜひ旅行や移住の際は、ベトナムの祭りスケジュールをチェックして、この国の心温まる伝統文化を体験してみてください。

以上、ベトナム在住者の視点からベトナムの祭りについてご紹介しました。祭りを通じてベトナムの文化をより深く理解し、素晴らしい体験をしていただければ幸いです。

現地在住ライター紹介
この記事を書いた人
ベトスカウト応援スタッフ「Kana」

現在は夫の帯同でベトナム・ハノイ(ホータイ区)に在住。3児(小学生~2歳)のママ。
大阪市立大学商学部を卒業後、大手百貨店総合職で勤務。WEBライター歴6年。

2018年より経営したキッズスペース兼ワークショップスペースを2023年にM&Aにて売却。

好奇心旺盛で多趣味なことには自信あり。
ベトナム、ハノイの情報を主婦目線、ママ目線でお届けしていきます!

(運営:THANK ASIA CO.,LTD/サンクアジア:厚生労働大臣許可番号27- ユ- 304568)

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