ベトナムのホーチミンは、近年開発された都市として、多様な文化や歴史、食べ物、ショッピングなどを楽しむことができ、東南アジアの中でも人気の高い観光地として知られています。
旅行を予定する際に必ず気になるのは現地の治安ですよね。女性やお子様連れで来る場合、特に不安を持たれる方もいるかもしれません。
この記事では、ホーチミンの治安の実態や注意点を現地在住の日本人の視点から解説します。筆者はベトナム在住8年間で、ホーチミンの様々なエリアを訪れた経験があります。その中で感じたことや知ったことを、できるだけ客観的にお伝えしたいと思います。
ホーチミンをビジネスで訪れる人や在住者が事前に知っておくべきこと、現地で気をつけるべきことを、具体的な例やデータを交えてお伝えします。
結論から言うとホーチミンの治安は悪くないと言えますが、軽犯罪には注意が必要です。ホーチミンを安全に楽しむために、この記事がお役に立てばとてもうれしいです。
ホーチミンの治安の基本情報
ホーチミンの治安は他の東南アジア諸国と比べて比較的に良好です。
外務省の海外安全情報によると、ベトナムは「治安状況は一般的に落ち着いている」レベルであり、特にテロや武力紛争の危険性は低いとされています。また、ベトナムの犯罪率は世界平均よりも低く、殺人や強盗などの重犯罪は少ないというデータもあります。
東南アジア諸国の世界平和指数ランキング(2023年) | |
シンガポール | 6位 |
マレーシア | 19位 |
ベトナム | 41位 |
ラオス | 46位 |
インドネシア | 53位 |
カンボジア | 73位 |
タイ | 92位 |
フィリピン | 115位 |
ミャンマー | 145位 |
※参考国のランキング | |
日本 | 9位 |
韓国 | 43位 |
2023年のIEP – Global Peace Index(世界平和指数)の統計を見てみると、ベトナムは全世界で41位です(2019年57位)。ベトナムを近隣の国と比較してみると、日本(9位)やマレーシア(19位)には劣りますが、韓国(43位)、タイ(92位)より治安がいいことが分かります。
※2023年の日本人被害報告(在ホーチミン総領事館より) | |
日本人犯罪被害報告 | 59件 |
最も多い被害内容 | スリ、ひったくり、タクシーのぼったくり 等 |
しかし同年2023年に、在ホーチミン日本国総領事館に寄せられたホーチミンの日本人犯罪被害報告件数は59件でした。
日本人被害報告のうち約半数は外国人を狙ったスリやひったくり、タクシーのぼったくりなどの軽犯罪です。特に、バイクに乗った犯人がバッグや貴重品を奪うひったくりは、ホーチミンで最も多い犯罪の一つです。
ホーチミンの治安は全体として悪くありませんが、軽犯罪が頻発しています。”軽”犯罪と言っても被害は辛いものです。十分注意しましょう。
女性の一人旅は問題ない?
前項では、軽犯罪が起きるものの、東南アジアの中でもベトナムが比較的に治安の良い国であることをお伝えしました。
では、女性の一人旅はどうでしょう?
在住民の経験から申し上げると、ベトナム・ホーチミンは女性でも安心して旅行のできる国です。
ベトナムの国民性では、女性の立場がとても強く、社会でも尊重されていることが理由の一つかもしれません。
また、ベトナムの方は外国人に対して無愛想ながらにも心優しく接してくれる人が多いです。比較的に安心して旅行ができると思います。
ホーチミンの治安ーエリア別
しかし、どんな国や都市でもそうですが、安全なエリアと危険なエリアが存在します。ホーチミンの治安もエリアによって差があります。
以下に地区ごとにホーチミンの治安を詳しく説明します。
ドンコイ通りやグエンフエ通りなどの1区中心部
ドンコイ通りやグエンフエ通りなどの1区中心部は、観光客やビジネスマンが多く集まるエリアです。ここは比較的安全で、夜も明るくにぎやかです。
しかし、スリやひったくり、違法タクシーなどの軽犯罪には注意が必要です。貴重品は安全に身につけるかホテルの金庫に預けて、人混みや”危険な匂い”のする場所は避けましょう。
ブイビエン通り/ファングーラオ通り
ブイビエン通り/ファングーラオ通りは、バックパッカーが集まる観光地ですが、夜の治安には注意が必要です。前項では「女性が旅行のしやすい国」と申しましたが、夜のブイビエン通りを女性一人で歩くことは危険なため避けましょう。
このエリアでは、「買春」「マリファナ」「賭博」といった違法行為が横行しており、外国人がトラブルに巻き込まれることがあります。
例えば「葉っぱあるよ」や「オンナ」といって、マリファナや買春を勧めてきます。もしも彼らに声をかけられたら、無視して歩き続けましょう。マリファナや買春はベトナムでも違法ですの手を出してはいけません。
他にも「金儲けしないか」と言われたら、断って立ち去りましょう。彼らの言う場所についていくと、ぼったくりや暴力に遭う可能性があります。賭博もベトナムでは違法です。警察に摘発されたり、犯罪組織に関わったりするリスクがあります。決して誘いに乗らないでください。
中華街のチョロン

出典:ベトスカウト事務局員撮影
中華街のチョロンは、5区と6区にまたがる一大商業エリアです。
市場や寺院などの観光スポットがあり日中は人通りが多いですが、夜は閑散として危険度が高まります。日中に観光を済ませて暗くなる前に帰るようにし、信頼できる交通手段を利用しましょう。
また、ローカルエリアでは貧困層の地域も多く、外国人が目立つため、スリやひったくり、ぼったくりのリスクが高くなります。
4区・7区・8区

場所:フーミフンのクレセントレイク
4区にはホーチミン博物館やサイゴン川クルーズ、7区には日本人学校や高級住宅街フーミンフン、8区にはローカルな市場や屋台など、それぞれに魅力的なスポットがあります。
この中で、フーミーフン地区は地区ごとに警備員がいることが多く、比較的安全です。
しかし、4区・7区(フーミーフン地区を除く)・8区は、低所得者層が多く住む地域であまり治安が良くありません。これらの地区では強盗や空き巣、麻薬の密売などの犯罪が多いと言われています。
ハノイの治安
参考としてハノイの治安についても解説していきます。
※ハノイ・ホーチミンの2023年犯罪数(在ベトナム日本大使館・領事館より) | |
ハノイの刑法犯認知数 | 3,110件 |
ホーチミンの刑法犯認知数 | 6,482件 |
ハノイは、政府や公的機関のお膝元かつベトナムの首都です。そのためか、ホーチミンに比べて治安が良いと言われています。お子様連れの旅行の際は、比較的にハノイの方が安心して旅行ができるかもしれません。
大きな違いとして、ハノイでは物乞いの方々が非常に少ないこと。また、街を歩いていても車が走っている量はハノイの方が格段に多いこともわかります。
ベトナム戦争で、ハノイはホーチミンに勝利した戦勝都市となります。その歴史的背景から、裕福な家庭が多いことも相まって犯罪件数がホーチミンより少ないのかもしれませんね。
とはいえホーチミン・ハノイに両方住んだベトスカウト事務局員の経験からすると、どちらの都市も想像より非常に治安がよく生活しやすい国だと日々感じています。
ホーチミンで犯罪や事故に遭わないための4つの対策
ここまで、ホーチミンのエリア別の治安やハノイとの比較をお伝えしました。
比較的に治安がいいホーチミンですが、まだまだ軽犯罪の危険はあります。そんな不安を払拭するために、ホーチミンで注意しておきたいポイントを解説していきます。
①バイクでのひったくりに注意する
ホーチミンで日本人被害報告(2022年)の約半数が、スリとひったくりです。
ホーチミンでは、バイクに乗った犯人がバッグや貴重品を奪うひったくりが頻繁に起こっています。特に、道路沿いのカフェやレストランに座っているときや、歩道を歩いているときに狙われやすいです。ひったくりに遭わないためには、以下のことに気をつけましょう。
1. バッグはたすき掛けにし、肩の内側に持つ
バッグはたすき掛けにして歩道側に持ちましょう。バッグのチャックやボタンはしっかり閉めます。ジーンズの後ろのポケットに財布を入れるのは盗まれても気づきにくいのでやめましょう。
2. 歩きスマホはしない
ひったくりのターゲットにならないよう、スマホをむやみに取り出さないなど注意が必要です。路上では、スマホなどの電子機器は、手に持たずにバッグに入れるか、ポケットにしまいます。
3. 身の回りの品から目を離さない
レストランや大型のフードコートなどでは、財布やスマートフォンをテーブルの上に置いておくと盗まれることが良くあります。使用しない時は必ずしまっておきましょう。
そのほか、バッグは必ず身体の前に抱えるようにするなど、持ち物の管理を徹底しましょう。カフェやレストランに座るときは、できるだけ奥の席や窓から離れた席を選ぶのも一つです。
4. 犯人に抵抗しない
もしもひったくりに遭ってしまった場合は、犯人に抵抗しないでください。
犯人は暴力的になる可能性がありますし、バイクに引きずられて怪我をする事例も報告されています。大声で助けを呼び、周囲の人や警察に通報しましょう。
5. 不要な貴重品やお金を持ち歩かない
高級ブランドのバッグやポーチ、外出に不要な貴重品やお金を持ち歩かないのが上策です。どうしても持ち歩く場合は、現金を複数の財布に小分けしたり、貴重品が見えないよう覆ったりすると、リスク対策として有効です。
②ぼったくりタクシーに注意する
ホーチミンでは、メーターを改ざんしたり、遠回りしたりして、外国人から高額な料金を請求するぼったくりタクシーが存在します。
特に、空港や観光地などで客引きをしているタクシーは要注意です。ぼったくりタクシーに乗らないためには、以下のことに気をつけましょう。
1. メーターのある信頼できるタクシー会社や配車アプリ「Grab」を利用する
ベトナムでは、メーターのないタクシーは違法です。メーターのあるタクシーでも、会社によって料金やサービスの質が異なります。
信頼できるタクシー会社としては、マイリン(Mai Linh)やビナサン(Vinasun)などがあります。これらのタクシーは、緑色や白色で、会社のロゴや電話番号がはっきりと表示されています。
タクシーを利用する時は、車両や運転手の情報、料金などについて事前に把握できる配車アプリ「Grab」も便利です。配車した車に乗る時は、ナンバープレートや運転手の名前などをチェックし、自分が手配した車であることを確かめます。
2. 料金メーター・目的地を確認する
タクシーに乗る前に、事前に料金を交渉するか、メーターを使うことを確認します。メーターが動いていない場合「メーターを使ってください」とはっきり伝えましょう。
“Hãy mở đồng hồ tích cước.“ 「メーターを使ってください」
目的地を口頭で伝えるか、地図で示しましょう。行き先を伝える際、運転手にスマホを渡さないよう気をつけてください。盗まれる事例が報告されています。遠回りされないように、ナビゲーションアプリなどでルートを確認するのもおすすめです。
3. 料金を支払うときは小銭を用意する
タクシーの料金を支払うときは、小銭を用意しておきましょう。大きな紙幣を渡すと「お釣りがない」と言って、お釣りを渡さない・ぼったくる可能性があります。また、チップは必要ありませんので、余計なお金を払わなくて大丈夫です。
4. お釣りは常に自分で確認する
お店やタクシーでお金を払うときは、お釣りを受け取る前に自分で計算しておきましょう。お釣りを受け取ったら、すぐに額面と枚数を確認し、間違いがないか確かめましょう。もしも間違いに気づいたら、すぐに相手に指摘してください。
空港などで、自分がGrabで手配した車を探している観光客に「Grab?」と声を掛け、別の車に案内して目的地とは違う場所に連れて行き、高額な料金を請求するドライバーがいます。自分が手配した車両かどうか、必ず確認しましょう。
③シクロやバイクタクシーに注意する
シクロ(人力車)やバイクタクシーを交通手段として利用したり、ホーチミン観光の記念にする方がいます。これらもぼったくりの被害に遭う可能性があります。
特に、シクロは料金が不透明で、交渉が難しいので、注意が必要です。シクロやバイクタクシーに乗るときは、以下のことに気をつけましょう。
1. 乗る前に料金・目的地を明確に交渉する
シクロやバイクタクシーに乗る前に、必ず料金を明確に交渉しましょう。可能なら、信頼できる旅行会社のオプションツアーを利用すると確実です。料金は、1人あたりの金額か、乗車時間あたりの金額か、距離あたりの金額かを確認しましょう。
シクロやバイクタクシーに乗るときは、目的地を口頭で伝えるか、地図で示しましょう。地図を見せるときや翻訳するときは、運転手にスマホを渡してはいけません。
2. 危険な場所や知らない場所に連れて行かれないように断る
シクロやバイクタクシーに乗っているときは、相手に勧められても、危険な場所や知らない場所に行くのは断りましょう。
例えば、相手の知り合いのお店や工場などに連れて行かれると、高額な商品やサービスを強要される可能性があります。ナビゲーションアプリなどでルートを確認するなどして勝手な動きを察知して、はっきり拒否します。
「ノー」と言える勇気が、身を守ります。
④見知らぬ場所への夜の外出は控える
ホーチミンでは、外国人女性が独り歩きしているのを見かける地区もあります。しかし、夜は酔っ払いや犯罪者が増えてトラブルに巻き込まれる可能性が高くなります。
夜に見知らぬ土地や危険そうな地域へは行かないようにします。暗くなってから部屋に戻る場合は、タクシーやGrabなど信頼できる交通手段を利用してください。
いざというときの緊急連絡先情報
パスポートのトラブルは日本領事館へ
もしホーチミン滞在中、パスポートで何かしらの被害に遭った場合は、「日本国総領事館」に連絡してください。
住所:261 Dien Bien Phu Street, District 3, HCMC
電話番号(代表):028-3933-3510
メールアドレス:ryouji@hc.mofa.go.jp
公式サイト:https://www.hcmcgj.vn.emb-japan.go.jp/itprtop_ja/index.html
事故・けが・病気はキャッシュレスサービス対応の病院へ
事故・けが・病気などの緊急時に備えて、日本語・英語を話せる医師(またはスタッフ)がいる医療機関をチェックしておきます。
海外での治療費は高額になることがあります。万が一のことも考え、海外旅行保険に加入し、契約内容を確認しておくようにしましょう。その際キャッシュレスサービスが利用できると、スムーズに治療を開始できます。
下記は日本語・英語を話せる医師(またはスタッフ)がいる医療機関の一部です。
住所 Diamond Plaza, 34 Le Duan Street, District 1, HCMC
電話番号 028-3822-7848
ウェブサイト https://poste-vn.com/fmp-hcmc
住所 6 Nguyen Luong Bang, Tan Phu, District7, HCMC
電話番号 028-5411-3333
ウェブサイト https://www.fvhospital.com/
ホーチミンの治安ーまとめ
この記事では、ホーチミンの治安の実態や注意点を現地在住の日本人の視点から解説しました。ホーチミンの治安について、事前に知っておくべきことや、現地で気をつけるべきことを、具体的な例やデータを交えてお伝えしました。ホーチミンの治安は良い方ではありますが、軽犯罪には注意が必要です。
- バイクでのひったくりに注意する
- ぼったくりタクシーに注意する
- シクロやバイクタクシーに注意する
- 見知らぬ場所への夜の外出は控える
ホーチミンは魅力的な観光地であり、現地在住の日本人としても楽しめることがたくさんあります。美しい建築物や歴史的な遺跡、豊かな自然やカラフルな市場、ベトナム料理やフレンドリーな人々など、ホーチミンには見どころや体験が満載です。
ホーチミン滞在を安全に楽しむために、この記事がお役に立てば幸いです。