ベトナムに子連れで渡航を考えている方にとって、ベトナムでの子育てはどのような特徴があるのか、日本とどんな違いがあるのかという点は非常に気になる点かと思います。
ベトナムはアジアの国なので、人の見た目や街並みなどは、日本人にとっても諸外国に比べて、比較的馴染みやすいほうではあります。
しかし、ベトナムはまだ発展途上国ということもあり、子育てに対する考え方は日本と大きく異なります。
今回は、ベトナムで子育てを考えている方に向けて、私の経験談を含めた、ベトナムの子育て・教育についてご紹介します。
私のベトナムでの子育て
私には3人の子供がいます。
1番上の子供は小学生、真ん中の子供は幼稚園児、一番下の子は2年前にハノイで出産した2歳児です。
ハノイでは、日系幼稚園、インターナショナルプリスクール、日本人学校、インターナショナルスクールに通わせた経験があります。
また、出産もハノイで経験しており、乳幼児から小学生までの子供を子育てしてきました。
ハノイでの子育ては日本とは異なりますが、私にとっては比較的メリットも多く、ハノイでしか体験できないことも多くあります。
私自身の経験も踏まえながら、まずはベトナムとハノイの子育ての違いについて説明したいと思います。
ベトナムと日本の子育ての違い
ベトナムと日本では、文化の違いからくる、子育てのさまざまな違いがあります。
まずはこの違いを知っておくことが、ベトナムでの子育てに困らない秘訣!
まずは違いを知ってみましょう。
衣服の違い
ベトナム人と日本人の間には衣服の着方に大きな違いがあります。
日本には四季がありますが、ベトナムは1年を通して比較的温暖です。
(ハノイの冬は少し寒いですが・・・)
また、日本人は几帳面で物資にも恵まれています。
そんな環境の違いからくるのか、私は以下の内容にとても驚きました。
・幼児に下着を履かせない
・乳幼児に裸足で遊ばせる
まず、紙おむつなのですが、ベトナムの物価を考えると、子供の紙おむつはとても高価なものです。
そのため、ベトナム人は紙おむつを使わずに子育てをする人も多く、できるだけ紙おむつを使わない子育てをしようとしているようです。
紙おむつを履かせていても、限界まで使っていたりします。
1歳になると、多くのベトナム人の子供がおむつを卒業するそうです。
ベトナムの床はタイルであることが多いので、漏らしてしまっても掃除すれば良いという考えがあるのでしょう。
そうしているとトイレを覚えるのも早くなるのかもしれません。
また、2,3歳の子供で、下着を履いていないということもよくあります。
下着を買うのも勿体無いと考えるのか、そのまま直にズボンを履かせる家庭が多いようです。
そして、スーパーや公園では靴を履かずに裸足で歩く子供たちも時々見かけます。
数年前よりは、大幅にその数が減ったと言われますが、ハノイでも時々見かけることがあります。
ベトナムには裸足で遊ばないといけない公園も存在します。
これらは日本人にとってはなかなか抵抗がある光景なのですが、物資に恵まれた先進国だからこそ感じる感覚なのかもしれません。
ベトナムはやはりまだ途上国でもあるので、必要最低限のものしか子供に買い与えないという印象があり、なくてもいいものは使わないという考えが強いのかなと感じます。
子育て環境の違い
子育て環境もベトナムと日本では大きく異なります。
日本では、核家族化が進み、両親共働きの家庭がどんどん増えています。
祖母や祖父と同居している人はとても少ないはずです。
そのため、私自身、日本で故郷を離れて子育てをしていた時は、非常に精神的に辛い時期がありました。
その頃と今を比べてみると、ハノイでの子育ては、周囲の人にたくさん助けられながら、楽しめているように感じます。
ベトナムではおばあちゃんが子育てをする
ベトナムの平均出産年齢は都市部では20代後半、地方部では20代前半が中心と、日本よりも若い歳で出産する人が多い傾向があります。
それに加えて、ベトナムの女性は非常に働き者!
出産を終えたら半年経たずにフルタイムの仕事に復帰する人も多くいます。
そのような理由もあって、おばあちゃんが赤ちゃんのお世話をすることが多いようです。
ハノイの街中や小児科でもおばあちゃんが大体一緒に付き添っているのを見かけます。
ベトナムではおばあちゃんになる歳も若く、50代で初孫というのも珍しくないはずです。
おばあちゃんが若くて元気なのも、孫を日常的に世話できる理由でしょう。
このように、ベトナム人の子育てにはおばあちゃんがとても協力してくれます。
ベビーシッターを安く雇える!
ベトナムは人件費が安く、居住外国人にはベビーシッター文化が根付いています。
私自身、妊婦の頃からベトナム人のベビーシッターにとても助けてもらい、孤独ではない子育てをすることができました。
ベトナムでベビーシッターを雇うとなると、時給60kVND(約350円)から見つけることができます。
日本人家庭に慣れた方も多く、日本語が話せたり、日本料理が作れたり、彼女たちの能力はプロフェッショナルです。
子育ては、1人でするのと仲間がいるのとでは気持ちの面での負担が大きく異なります。
異国の地での子育てはわからないことや悩むことも多いと思いますので、ぜひベビーシッターの活用をおすすめします。
日本人コミュニティで助け合う
ハノイでは住まいや学校など、日本人同士で交流する機会がたくさんあります。
わたしも日本にいた時には、いわゆるママ友が多くいたわけではありませんが、今では本当にたくさん周囲の方に助けてもらっています。
同じ住まいの方に子供の送り迎えをお願いしたり、子供の遊び場でお話をしたり。
些細な会話でも、やはり日本人の子育て中の方とのお話は気持ちのリフレッシュにつながります。
ベトナムで子育てをする際には、最初に日本人の知り合いを作ることがおすすめです。
子育てサークルのような集まりもありますので、異国での子育てに不安を感じる場合は、まずはコミュニティに属してみるのが良いでしょう。
食事の違い
子供に関する食事で一番驚いたのは、ベトナムには離乳食が存在しない!ということです。
ベトナムでは、2歳くらいまでお粥を食べさせる習慣があるようで、日本のようにメニューを決めてアレルギー対策をしていくような食材ごとの離乳食の考え方はありません。
また、肥満児も多く見かけますが、子供の食事に対する栄養管理が十分に行き届いていないように感じます。
日本人が移住するにあたっては、ベトナムも米文化のため、フォーやお粥など、小さな子供にも食べさせやすいメニューが多くあります。
しかし、塩分や油分が多い食事が多くありますので、特に子供には気をつける必要があります。
子供に対する考え方の違い
日本人の子育ては、子供に対して自立を促し、大人になっても困らないように、周囲の人に迷惑をかけないようにしつけます。
しかしベトナムでは、そこまで自立を促すようなしつけはしないそうです。
さらに、おばあちゃんが子育てに加わるということもあってか、甘やかされて育つ子供が多い印象があります。
着替えや食事など、すべての身の回りを大人がしてしまうことが多く、何も自分でできないという子供が多いようです。
また、周囲の迷惑にならないように育てるのも、日本ならではの価値観なので、ベトナムでは飲食店や商業施設などでも走り回っている子供たちがたくさんいることに驚くことでしょう。
【メリット・良いところ】ベトナムでの子育て
ベトナムでの子育ては、メリットもあれば、やはりデメリットも感じます。
私自身の経験も踏まえて、どちらの面からもしっかりとお伝えしていきます。
子供に対して優しい人が多い
ベトナムは日本に比べて、少子化が進んでいないので、街中にたくさんの子どもたちが存在します。
多くのベトナム人が小さな子供と触れ合うことに抵抗を感じておらず、気軽に声をかけてくれます。
時には抱っこしてくれたり、チューっとされそうになる時もあります。
これらに抵抗のない人からすると、レストランや子供施設など、どこでも子供の相手をしてくれる人が多いので、非常に助けられます。
ただ、気を抜くと、勝手におやつや飴を食べさせられたり、チューされてしまったりするので、心配な方はあまり目を離しすぎないようにした方が良いでしょう。
子供が多い故か、子供がいると迷惑がられるような場所も少ないので、美容院やマッサージ店、レストランなど、基本的に子連れで嫌な顔をされることはあまりありません。
この点に関しては、日本での子育てよりも肩の力が抜け、私自身とても助けられています。
子育て用品やおもちゃが安価
子育て用品、例えばおむつや子供服、三輪車のようなものがベトナムでは安価に購入することができます。
あまりにも安いものは品質が心配ですが、それなりの品質で安く済ませたい場合には、とてもお財布に優しい価格で子育て用品を揃えることができます。
日系の子育て用品を取り扱うショップもありますが、日本よりも高価な値段で販売されていることがありますので、日本の製品は厳選して選ぶ必要があります。
習い事も比較的安価
子供の習い事も価格は大きく幅が開いていますが、種類によっては安価で習わせることが可能です。
例えば、ベトナムローカルのサッカーチーム、スイミングスクール、英語教室などを探せば、日本に比べて安い価格の習い事を見つけることができるでしょう。
日本人向けのスクールは日本と同じくらいの価格に設定されていることが多いです。
米文化だから食事に困らない
ベトナムは日本と同じように、主食が米です。
これは、子育て世帯には非常に助かる条件かと思います。
ベトナムには、米麺を使った、フォー(phở)やブン(bún)の料理もたくさんあり、白ごはんやお粥(cháo)も日常的に食されています。
そのため、ローカルのレストランに行っても、子供たちの食べやすいものがあるのがとても助かります。
日本米もスーパーで気軽に手に入れることができます。
私自身、欧米諸国に旅行に行った時は本当に大変で、子供たちは常に揚げ物くらいしか食べていなかったので、それと比べると食事の面でベトナムはとても子育てがしやすい国だと感じます。
子供施設が充実している
子供が多いこと、外が暑い、空気が悪いことが理由だと思いますが、ベトナムには子供向けの室内遊び場がたくさんあります。
イオンモールやビンコムセンターなど、商業施設に行けば、必ず1つは遊び場が入っています。
これらの遊び場の中には、ボールプールやアスレチックがあったり、簡単な手作りワークショップをしていたりと、子どもたちが楽しめるコンテンツがたくさん用意されています。
2~3時間遊んで日本円で1000円前後のところが多いので、気軽に遊びに連れていくことができます。
【デメリット・悪いところ】ベトナムでの子育て
衛生環境が悪い
ベトナムに来て、一番辛いのが衛生環境の悪さです。
日本で育ってきた子供たちは嫌がる場面が多いです。
それでも10~20年前に比べると格段に良くなっていると聞きます。
ハノイやホーチミンで暮らしていても、トイレは普通に使える程度には綺麗です。
しかし、ローカルの飲食店や田舎に行った時には、トイレはとても汚いので覚悟しておいた方が良いでしょう。
また、都市部に多いようですが、道にゴミがたくさん落ちているのは日本人にとっては非常に不快に感じます。
ゴミの匂いもひどい時があるので、その点はベトナムの残念なところです。
基本的に衛生観念が日本人とは異なりますので、あまり細かく気にすると辛くなってしまうかと思います。
爪をすごく伸ばした運転手、トイレで手を洗う人がいない、床に直に座るなど・・・
文化が違うので、この点はおおらかに、あまり神経質にならない方が良いかもしれません。
歩いて散歩ができない
小さな子供がいると、外の景色を見せてあげたかったり、日本のようにお散歩をしたくなるはずです。
しかし、ベトナムでは道が整っていないところが多く、ベビーカーをスムーズに押すことは非常に困難です。
ベビーカーのタイヤが故障したという友人の話も何度か聞きました。
また、バイクと車の数が非常に多く、交通ルールがあってないようなものだったりするので、小さなこどもを連れて外の道を歩くのは非常に危険です。
歩道のある道も増えてきましたが、それでもまだまだ多くはありません。
外を歩くなら、大きな公園の中か、新しく開発されている街内が良いかと思います。
アレルギーへの理解が乏しい
私の子供はアレルギーを持っているのですが、アレルギー疾患は先進国病とも言われており、途上国では患者数が少ないようです。
実際、ベトナムにもアレルギーの人はいるのでしょうが、その少数派の人にまで考慮された社会の仕組みはまだ成り立っていません。
お子様にアレルギーがある場合、途上国で暮らすことは抵抗のあることだと思います。
私自身の経験として、以下のことは必ず行うことをおすすめします。
・できる限り、日本からの常備薬、緊急薬を持ってくる
・ベトナムでも主治医(できれば日本人医師)を見つける
・アレルギーカード(英語、ベトナム語)を作って携帯しておく
日本の医師に相談すると、海外で使用するために多めに薬を処方してくれる場合もあります。
できる限り常備薬と緊急薬を持ってきておくのがお守りになります。
また、同じ効能の薬はベトナムにもありますので、渡航後はできるだけ早く、ベトナムでの主治医を見つけるようにするのが良いでしょう。
エピペン(アドレナリン自己注射薬)はベトナムにはありませんので、必要な方は必ず日本から持ち込みましょう。
アレルギーカードを作成して持ち歩いていると、レストランで注文する際にも役立ちます。
英語だと理解できない店員も多いので、ベトナム語のタイプも用意しておくのが安心です。
離乳食やおやつが気軽に購入できない
日本では、困った時にレトルトの離乳食や乳幼児用のお菓子が簡単に手に入りましたが、ベトナムではそれらを販売しているお店はごく一部です。
お出かけ時に「忘れてしまった!」と気付いても、すぐに買いに行くことができません。
そんな時におすすめの対処法をご紹介します。
・フォーを小さく砕いてあげる
・パンを購入してミルクに浸してあげる
・フルーツをあげる
多くのレストランで白米を提供しているはずですので、まずは店員さんに聞いてみましょう。
お粥がある場合もありますが、味付けが濃い場合がありますので、月齢によっては注意が必要です。
また、フォーは小さく砕いてあげれば、離乳食中期くらいから食べられるかと思います。
パンは比較的どこのスーパーでも購入が可能ですので、柔らかい部分をとって、ミルクと混ぜればミルク粥にして離乳食初期から与えることができます。
おやつに関しては、ベトナム市販のもので赤ちゃん用のものはなかなか販売されていません。
どうしても手持ちがなくて与える必要がある場合には、フルーツなら簡単に手に入ります。
ベトナムのスイカは水分も多く、季節問わずに美味しく食べられます。
ドラゴンフルーツも柔らかくて、乳幼児にも食べやすいでしょう。
日本に比べて不便であることは確かですが、工夫次第で乗り越えることができます。
他人との距離感が近い
小さな赤ちゃんがいる場合、この点は非常に気になるかと思います。
ベトナムでは生後3ヶ月くらいまではほとんど赤ちゃんを外出させないそうです。
そのため、小さな赤ちゃんを連れていると特に、たくさんのベトナム人に囲まれます。
抱っこさせてーと言ってくる人も中には存在します。
Noというのが苦手な日本人ですが、はっきり言わないとベトナムでは伝わりません。
嫌だと感じた時は、母親・父親としてはっきりNoと伝えましょう。
何歳になっても、子供というだけでお菓子をいただいたり、ほっぺや手を触られたりすることはあります。
これは、ベトナム人の優しさでもあると思うのですが、感染症が心配な場合や、子供に触れてほしくない場合にはしっかりと注意した方が良いでしょう。
まとめ
ベトナムでの子育てについて、実体験を踏まえて具体的にご紹介しました。
これからベトナムに渡航するというお子様連れの方にも、イメージしていただけたでしょうか。
ベトナムは日本と比べると、不便なところや文化の違いによるギャップを感じることは多々あります。
しかし、人々はみな温かく、子供たちが歓迎されている雰囲気を感じられるのは、ベトナムに来てよかったと感じる理由の一つです。
便利な子育ては難しいかもしれませんが、たくさんの人との関わりの中で、工夫しながらやっていくと、ベトナムでの子育てもきっと楽しめることと思います。
これから、ベトナムでの子育てを考えている方にとって、今回の内容が参考になっていましたら、とても嬉しく思います。