ベトナムは新鮮なエビが気軽に食べられることでも有名で、ベトナム料理にもよく使用されています。 また、ベトナムの調味料、エビ塩(Muoi Ot Tom)は日本人にも人気の調味料で、お土産にする人も多くいます。
今回の記事では、ベトナムで美味しいエビを堪能したい方に向けて、ベトナムのエビの種類や使われ方、レシピ、エビ塩の使い方まで、詳しくご紹介します。
ベトナムのエビ事情〜世界有数のエビ生産国の実力
ベトナムは世界有数のエビの生産・輸出国として知られています。南シナ海とメコン川デルタに恵まれた地理的条件により、高品質なエビの養殖が盛んに行われ、日本を含む世界各国へ輸出されています。
実はベトナムは日本に輸入されるエビの約2割を占める主要供給国。スーパーで「ブラックタイガー」や「バナメイエビ」と表示されているエビの多くがベトナム産なのです。
ベトナム人にとってエビは単なる食材ではなく、文化的にも重要な存在です。家庭料理からハレの日の豪華な料理まで、様々な場面でエビが活躍しています。
ベトナムエビの特徴と魅力
ベトナム産のエビが世界中で評価されている理由は、その鮮度と風味の良さにあります。
特に以下の点が高く評価されています。
・甘みが強く、旨味が凝縮されている
・養殖技術の向上により、安定した品質を維持
・持続可能な養殖方法への取り組み
ベトナムで食べられるエビの種類と特徴
ベトナムで食べられるエビは実に多様です。それぞれに特徴があり、料理によって使い分けられています。主なエビの種類をご紹介します。
ブラックタイガー(Tôm Sú)
ベトナム最大の輸出エビ種です。
体長は20cm以上になることもある大型のエビで、名前の通り黒と灰色の縞模様が特徴的です。
特徴: 肉厚でプリプリとした食感、甘みが強い
主な産地: メコンデルタ地域(カマウ省、バクリュウ省など)
主な調理法: 塩焼き、炒め物、揚げ物など
バナメイエビ(Tôm Thẻ Chân Trắng)
白エビとも呼ばれ、ベトナムでの養殖量が急速に増加している種類です。
特徴: 柔らかい食感と繊細な甘み、養殖しやすい
主な産地: 中部沿岸地域(クアンナム省、クアンガイ省など)
主な調理法: 炒め物、スープ、春巻きの具材など
車エビ(Tôm Hùm)
高級食材として知られる車エビもベトナムでは養殖・漁獲されています。
特徴: 濃厚な旨味と弾力のある食感、鮮やかな赤色
主な産地: 中部沿岸地域(ニャチャン、ファンティエットなど)
主な調理法: 蒸し料理、グリル料理など
川エビ(Tôm Đồng)
淡水に生息する小型のエビで、地元の市場でよく見かけます。
特徴: 小ぶりだが風味が豊か、殻ごと食べられることも
主な産地: メコンデルタの淡水域
主な調理法: 炒め物、揚げ物、発酵調味料の原料など
サクラエビ(Tôm Tít)
日本のサクラエビに似た小型のエビで、ベトナム料理の風味付けに使われます。
特徴: 小さくて鮮やかな色、乾燥させて保存されることが多い
主な産地: 南部沿岸地域
主な調理法: 乾燥させて調味料や薬味として使用
ベトナムのエビ塩(ムオイオットム)とは?
ベトナム料理を語る上で欠かせないのが「ムオイオットム(Muoi Ot Tom)」と呼ばれるエビ塩です。「ムオイ(塩)」「オット(唐辛子)」「トム(エビ)」を組み合わせた言葉で、エビの風味が効いた絶品調味料です。

筆者撮影
ムオイオットムの基本情報
ムオイオットムは、塩、唐辛子、ライム果汁を基本に、乾燥エビや発酵エビを加えた調味料で、地域や家庭によって様々なバリエーションがあります。
基本材料: 塩、唐辛子、ライム果汁、乾燥エビ
追加材料: ニンニク、砂糖、魚醤(ヌクマム)など
使用方法: 新鮮なエビや魚介類、フルーツなどにつけて食べる
地域性: 北部はシンプル、中部は辛め、南部は甘みが強い傾向
ムオイオットムの魅力と特徴
ムオイオットムの最大の魅力は、シンプルな材料ながら複雑な味わいを生み出す点にあります。塩の塩味、唐辛子の辛さ、ライムの酸味、そしてエビの旨味が絶妙なバランスで調和し、食材の味を引き立てます。
特に新鮮なエビとの相性は抜群で、エビ本来の甘みをさらに引き立て、風味豊かに仕上げます。また、ベトナム人は「ムオイオットムで食べるエビは消化に良い」と信じており、健康面でも重宝されています。
家庭ごとに異なるムオイオットムのレシピ
ベトナムでは「家庭の数だけムオイオットムのレシピがある」と言われるほど、各家庭で独自のレシピが守られています。
北部スタイル: 塩と唐辛子を中心に乾燥エビを少量加えたシンプルな味わい
中部スタイル: レモングラスや山椒を加え、発酵エビを多めに使用した複雑な風味を持つ
南部スタイル: 砂糖やココナッツミルクを加え、乾燥エビの風味を活かした甘みのある味わい
また、家庭によっては秘伝のハーブやスパイスを加えることもあり、その味は千差万別です。
ベトナムのエビ塩(ムオイオットム)を使った絶品料理
ムオイオットムは様々な料理に活用されていますが、特にエビ料理との相性は抜群です。
代表的なムオイオットムを使ったエビ料理をご紹介します。
エビのムオイオットム炒め(Tôm Rang Muối Ớt)
ベトナムのレストランで最も人気のあるエビ料理の一つです。
殻付きのエビをムオイオットムと一緒に炒め、香ばしく仕上げます。

イメージ写真です
基本レシピ
ブラックタイガーエビ(殻付き)500g
ムオイオットム 大さじ2
ニンニク(みじん切り)4片
唐辛子(小口切り)2本
レモングラス(みじん切り)1本
植物油 大さじ3
青ネギ(小口切り)適量
作り方
1.エビは頭と殻はそのままで、背わたを取り除き、水気をよく拭き取ります
2.フライパンに油を熱し、ニンニク、唐辛子、レモングラスを香りが立つまで炒めます
3.エビを加え、全体に色が変わるまで2〜3分炒めます
4.ムオイオットムを加え、さらに1分ほど炒め合わせます
5.青ネギを散らして完成
エビのムオイオットム蒸し(Tôm Hấp Muối Ớt)
蒸し料理でエビの風味と食感を最大限に活かした一品です。

イメージ写真です
基本レシピ
ブラックタイガーエビ(殻付き)500g
ムオイオットム 大さじ2
レモン汁 大さじ1
ニンニク(みじん切り)3片
パクチー 適量
作り方
1.エビは背わたを取り除き、水気を拭き取ります
2.エビにムオイオットム、レモン汁、ニンニクを絡めます
3.蒸し器で5〜7分蒸します
4.パクチーを散らして完成
グリーンマンゴーとエビのサラダ(Gỏi Xoài Tôm)
ムオイオットムの酸味と辛さが青マンゴーの酸味と絶妙に調和する爽やかなサラダです。

イメージ写真です
基本のレシピ
茹でたエビ(殻なし)300g
青マンゴー 1個(千切り)
赤玉ねぎ 1/2個(薄切り)
パクチー、ミント 各適量
ローストピーナッツ 大さじ2
ムオイオットムドレッシング
(ムオイオットム大さじ1、砂糖小さじ1、ライム汁大さじ2、魚醤小さじ1を混ぜたもの)
作り方
1.青マンゴー、赤玉ねぎ、ハーブ類を混ぜ合わせます
2.茹でたエビを加えます
3.ムオイオットムドレッシングをかけて混ぜます
4.ローストピーナッツを散らして完成
自宅で作る本格ベトナム風エビ塩(ムオイオットム)の作り方
本場ベトナムのムオイオットムを自宅で簡単に作ることができます。基本のレシピと地域別のバリエーションをご紹介します。
基本のムオイオットムレシピ

引用元:https://banhtrangtayninh.com/muoi-tom-tay-ninh/
塩 大さじ1
赤唐辛子(みじん切り)1〜2本(辛さはお好みで)
ライム果汁 大さじ2
にんにく(みじん切り)2片
乾燥エビ(細かく砕いたもの)大さじ1
作り方
1.乾燥エビはフードプロセッサーまたはすり鉢で細かく砕きます
2.すべての材料をボウルで混ぜ合わせます
3.10分ほど置いて、風味を馴染ませます
4.保存する場合は清潔な瓶に入れて冷蔵庫で1週間ほど保存可能
地域別ムオイオットムのバリエーション
北部スタイル(ハノイ風)
追加材料
黒胡椒 小さじ1/4
ごま油 小さじ1/2
シンプルで上品な味わいが特徴です。エビの蒸し料理や茹でエビによく合います。
中部スタイル(フエ風)
追加材料
レモングラス(みじん切り)1本
山椒 小さじ1/4
魚醤(ヌクマム)小さじ1
発酵エビペースト(マムトム)小さじ1/2
複雑な風味と辛さが特徴で、炒めエビや揚げエビと相性抜群です。
南部スタイル(ホーチミン風)
追加材料
砂糖 小さじ1
ココナッツミルク 小さじ2
青ネギ(みじん切り)1本分
甘みと風味が豊かで、グリルエビやエビのサラダによく合います。
ムオイオットムを使ったアレンジレシピ
ムオイオットムは様々な料理に活用できます。エビ以外にも試してみたいアレンジレシピをご紹介します。

真ん中の塩がムオイオットム
フルーツディップ: グリーンマンゴーやパイナップルをムオイオットムにつけて食べる
野菜スティック: キュウリやニンジンのスティックをムオイオットムで
焼き魚のソース: 白身魚のグリルにムオイオットムをかける
サラダドレッシング: ムオイオットムに油を加えてドレッシングに
ベトナム旅行でエビ料理を楽しむコツと注意点
ベトナム旅行でエビ料理を存分に楽しむためのコツと注意点をご紹介します。
おすすめのエビ料理レストラン
ホーチミン
Quan An Ngon(クアン・アン・ゴン)

引用:Googlemapより
住所: 138 Nam Ky Khoi Nghia, District 1
特徴: ベトナム各地の郷土料理が楽しめる人気店。エビのムオイオットム炒めが絶品
Cuc Gach Quan(クック・ガック・クアン)

引用:Googlemapより
住所: 10 Dang Tat, District 1
特徴: 伝統的な家庭料理を提供する古民家レストラン。エビの調理法が豊富
ハノイ
Cha Ca Thang Long(チャカー・タンロン)

引用:公式ホームページより
住所: 2D Duong Thanh, Hoan Kiem
特徴: 魚料理で有名ですが、エビのムオイオットム料理も秀逸
ダナン
Hai San Be Man(ハイサン・ベー・マン)

引用:Googlemapより
住所: Lo 14 Duong 30/4, Phuoc My
特徴: 新鮮な海鮮料理が楽しめるシーフードレストラン。エビの種類が豊富
Lang Nghe Restaurant(ラン・ゲー・レストラン)

引用:公式ホームページより
住所: 119 Lê Lợi, Hải Châu ., Đà Nẵng
特徴: 中部地方の伝統料理を提供。海鮮料理が豊富。
エビ料理を注文する際の現地ベトナム語フレーズ
ベトナムでエビ料理を注文する際に役立つフレーズをご紹介します。
ムオイオットム = Muối Ớt Tom(ムオイ オット トム)
エビのムオイオットム炒め = Tôm Rang Muối Ớt(トム ラン ムオイ オット)
エビの蒸し料理 = Tôm Hấp(トム ハップ)
エビの塩焼き = Tôm Nướng Muối(トム ヌォン ムオイ)
これをください = Tôi muốn món này(トイ ムオン モン ナイ)
おすすめは何ですか = Món nào ngon nhất?(モン ナオ ゴン ニャット)
衛生面での注意点
ベトナムでエビ料理を安全に楽しむための注意点です。
店選びのポイント
・客の入りが多く、回転率の良い店を選ぶ
・清潔感のある調理場が見える店が安心
・地元の人で賑わっている店は間違いない
食べ方の注意点
・生エビ料理は高級店で食べるのが安全
・屋台では十分に火が通ったエビ料理を選ぶ
・水や氷には注意(ミネラルウォーターを頼むのが安全)
アレルギーがある場合
「Tôi bị dị ứng với tôm」(トイ ビ ジ ウン ボイ トム)= エビアレルギーがあります
事前に翻訳アプリなどで伝える準備をしておく
よくある質問
Q: ムオイオットムは日本でも手に入りますか?
A: アジア食材店やベトナム食材専門店で購入できることがあります。ただし、この記事で紹介したレシピを参考に自家製を作るのが最も本格的な味わいを楽しめます。乾燥エビは日本のスーパーでも手に入りやすい食材です。
Q: ベトナムのエビ料理で日本人に特に人気があるのはどれですか?
A: エビのムオイオットム炒め(Tôm Rang Muối Ớt)と生春巻き(Gỏi Cuốn)に入っているエビが特に日本人観光客に人気です。どちらも日本人の口に合う味付けで食べやすいからでしょう。
Q: ベトナムのエビ養殖は環境に配慮されていますか?
A: 近年、ベトナムでは持続可能なエビ養殖への取り組みが進んでおり、環境に配慮した養殖方法が増えています。特に有機エビやASC認証(水産養殖管理協議会)を取得したエビ養殖場も増加しています。
Q: ムオイオットムの辛さは調整できますか?
A: はい、唐辛子の量を調整することで辛さを好みに合わせることができます。辛いのが苦手な方は、唐辛子を減らすか、種を取り除くと辛さを抑えられます。
Q: 乾燥エビの代わりに何を使えますか?
A: 乾燥エビが手に入らない場合は、エビの風味が出る「エビの粉末だし」や「エビペースト」で代用できます。風味は若干異なりますが、近い味わいを再現できます。
まとめ
ベトナムのエビ料理は、新鮮な素材と独特の調味料が生み出す絶妙なハーモニーが魅力です。特にムオイオットム(Muoi Ot Tom)は、シンプルながらも奥深い味わいを持つ調味料で、エビの風味を最大限に引き出します。
ベトナムは世界有数のエビの生産国であり、様々な種類のエビが料理に活用されています。ブラックタイガーやバナメイエビといった輸出用の高級エビから、地元で親しまれている川エビまで、多様なエビ料理を楽しむことができます。
ムオイオットムはエビの風味が効いた調味料で、エビ料理だけでなく様々な料理に活用できる万能調味料です。地域や家庭によってレシピが異なり、それぞれに個性があるのも魅力の一つです。
ベトナムを訪れる機会があれば、ぜひ本場のエビ料理とムオイオットムの組み合わせを体験してみてください。また、この記事で紹介したレシピを参考に、自宅でもベトナム風エビ料理に挑戦してみるのもおすすめです。
ベトナム料理の魅力は、シンプルな材料から複雑な味わいを引き出す技にあります。
エビとムオイオットムの組み合わせは、そんなベトナム料理の真髄を感じられる最高の組み合わせと言えるでしょう。