「ベトナムでは水道水は飲めないと聞いたけど、本当なの?」
「一度沸かせば飲んでもいいの?」
「どのお水を買えばいいの…?」
日本では水について心配することはあまりありませんが、ベトナムで生活する人にとって「安全な水」は生活に直結する非常に大事なテーマです。
では、ベトナムの水道水の品質はどうなっているのでしょうか。煮沸した水道水、歯磨きでの使用はどうでしょうか。家で、街で安全に水を飲む方法について、8年ベトナムに住んでいる筆者視点で解説します。
ベトナムの水道水は飲めない? 水道水の問題点
ベトナムの水道水の品質
ベトナムの水道水の品質は、世界保健機関(WHO)の基準よりも緩いものであり、水道水に含まれる有害物質や病原体の許容量が高いものになっています。消毒用塩素の使用量が多く、水道局を出た後の水道水には日本の基準の10倍近い塩素が含有されているとも言われています。
ベトナムの水道水にはどのようなリスクがあるのでしょうか。
- 有害物質:ベトナムの水道水は、鉛、銅、鉄、亜鉛などの重金属や農薬が残留していると言われています。 これらの重金属や農薬は、長期的に摂取すると、腎臓や肝臓などの臓器や神経系や血液系に影響を与えたりする可能性があります。
- 病原体:ベトナムの水道水から大腸菌やサルモネラ菌などの細菌や、アメーバやジアルジアなどの原虫が検出されたことが報告されています。 下痢や腹痛、発熱などの症状を引き起こします。
多くのベトナム人は直接水道水を飲みません。日本の外務省も「(ベトナムの)水道水の水質は良好とは言い難く、飲水には適しません」としています。日本や欧米などの先進国の水道水に比べて、ベトナムの水道水は品質が低く飲用水としては適していません。
煮沸した水道水の使用はどうか?
これらの有害物質や病原体は、水道水を沸騰することで除去できるのでしょうか。
水道水を沸騰することで除去できるのは、塩素と病原体だけです。 重金属や農薬などの有害物質は、水道水を沸騰しても除去できません。 逆に、水分が減ることで、有害物質の濃度が高まる可能性があります。 そのため、水道水を沸騰するだけでは「絶対安全」とは言えないようです。
歯磨きやうがいに水道水を使うのはどうか?
歯磨きやうがいに水道水を使うリスクは、水を飲むことほどではありません。しかし、歯磨きやうがいに水道水を使うと、口の中に有害物質や病原体が入り込む可能性はあります。
もちろん、ベトナム在住日本人でも意見はいろいろで、「スープや野菜をゆでる水は水道水でも大丈夫」という人から、「食べ物を洗う時や歯磨きも全てミネラルウォーターを使用している」いう人までいます。
それぞれの責任で水道水やミネラルウォーターを上手に活用しましょう。
ミネラルウォーターでもお腹を壊すことがあり、大丈夫かと心配になるかもしれません。お腹を壊す理由は水質だけでなく、「軟水と硬水の違い」の可能性があります。ベトナムの水の多くは硬水(マグネシウムなどミネラルを含む)なので、硬水に慣れていない日本人が急に硬水を飲むとお腹を壊す原因になることがあります。
ベトナムで安全に水を飲む方法は?
ベトナムの水道水は直接飲めないなら、ベトナムで安全に水を飲むにはどうすればいいのでしょうか? ここでは、家や外出先での安全に水を飲む方法、氷やレストランの飲料水の安全性などを解説します。
家では水の宅配サービスや浄水器を使用する
ベトナムで水道水を飲用水として使う場合は、浄水器を設置することがおすすめです。中流層以上のベトナム人の家には、必ずと言っていいほど浄水器が設置されています。
もう一つの方法として、水の宅配サービスを利用する方法があります。 水の宅配サービスとは、ミネラルウォーターの大容量ボトル(19リットル)を自宅やオフィスに届けてくれるサービスです。 また、ウォーターサーバーをレンタルすることもできます。
外出先での水分補給はミネラルウォーター
基本はコンビニやスーパー、屋台でミネラルウォーターを買ってください。
市販されているミネラルウォーターは、どれも安全に飲むことができます。 ただし、ベトナムの水は硬度が高い傾向にあるので、日本人はお腹を壊しやすい可能性があります。 そのため、水分補給はこまめに少量ずつ行うのがおすすめです。
氷やレストランの飲料水の安全性
ベトナムでは、暑い気候のために氷を使った飲み物(食べ物)がたくさんあります。
ベトナムでは近年、製氷工場の衛生管理が改善されており、ミネラルウォーターを使用して製氷する業者も増えています。 また、ホテルやレストランなどでは、自家製氷機でミネラルウォーターから氷を作っているところもあります。 そのため、氷の品質は店によって異なりますが、一概に危険とは言えません。
では、どうやって安全な氷を見分けるのでしょうか? 一つの目安としては、氷の形や色です。 一般的に、丸い形や透明な色の氷はミネラルウォーターから作られた可能性が高いと言われています。
※筆者の経験則としては、穴が開いている氷はだいたい有料で仕入れたものですので安心です。
もう一つの注意点としては、レストランで提供される飲料水です。
レストランでは、水道水を沸騰させたものや浄水器でろ過したものを飲料水として出すところもあります。 レストランで飲料水を頼むときは、必ずミネラルウォーターを指定するようにしましょう。
一方で調理をするときに使う水や野菜などを洗うときは水道水をそのまま使われることが多いようです。
ベトナムや東南アジアといった水が不衛生の国に旅行するときは「生野菜を口にしたら駄目」と言われていますが、その理由の1つは、野菜に付着した水道水を摂取してしまいお腹を壊すからです。これは4つ星、5つ星といった高級ホテルのレストランでも水道水が普通に使用されていますので、なかなか回避するのは難しいのが現状。気にする人は水滴が付着している生野菜は口にしないのがいいかもしれません。
ベトナム在住者が実践している水の工夫は?
ベトナムの水道水は飲めないということは、前の部分で説明しました。では、ベトナム在住者は、どのように水を使っているのでしょうか?
ここでは、ベトナム在住者が実践している水の工夫について、ミネラルウォーターのおすすめブランド、水の宅配サービスの利用方法、浄水器の種類やメリットなどを紹介します。
ミネラルウォーターのおすすめブランドや購入方法
ベトナムで水を飲むときは、基本的にはミネラルウォーターを選ぶのが無難です。
ミネラルウォーターは、スーパーやコンビニ、個人商店などで気軽に購入できます。 価格も日本よりもかなり安く、500mlのペットボトルで約20〜40円、1.5Lのペットボトルで約50〜80円ほどです。
ベトナムで購入できるミネラルウォーターのブランドはたくさんありますが、中でもおすすめなのは以下の4つです。
- ● Aquafina(アクアフィーナ):ペプシコ社のブランドのミネラルウォーターです。 硬度は低く、味はさっぱりしています。 ベトナムでは最も人気のあるミネラルウォーターのひとつです。
- ● La Vie(ラヴィエ):ベトナムで人気のあるネスレ社のミネラルウォーターです。硬度は中程度で、私たち日本人には少し飲みにくく感じるかもしれません。
- ● Satori(サトリ):日本語っぽいブランド名ですが、サトリカンパニーというベトナム企業。最先端のミネラル循環・水処理技術によるミネラルウォーターです。 無味無臭で飲みやすくボトルに清潔感があるので、筆者が特に好きなミネラルウォーターです。
- ● Dasani(ダサニ):コカ・コーラ社が提供するミネラルウォーターです。筆者は硬度が低く、飲みやすいと感じて愛飲しています。
これらのミネラルウォーターは、どれも安全に飲むことができます。 もし上記すべての表品が並んでいたら、硬度が高いものは口当たりに違和感があるので、無味無臭で硬度の低いミネラルウォーターを筆者は選びます。
水の宅配サービスの利用方法
自宅でで飲用水を入手する一つの方法として、水の宅配サービスがあります。
水の宅配サービスとは、ミネラルウォーターの大容量ボトルを自宅やオフィスに届けてくれるサービスです。 一般的には、19リットルのボトルが1本約48,000〜70,000VND程度で購入できます。 また、ウォーターサーバーをレンタルすることもできます。
ベトナムで人気の水の宅配サービスの一部を紹介します(値段は2024年3月現在)。
- ● 清流霧降(せいりゅうきりふり):筆者は2016年に数回利用したことがあり、とても飲みやすい印象があります。軟水で赤ちゃんのミルクにも安心です。日本語で電話・ZALOで簡単に注文できます。 1本50,000VNDで、4本以上で送料無料。※ハノイでは現時点で利用不可。
- ● LaVie(ラヴィ):ネスレ社の飲料水ブランドで、ベトナムで多く飲用されています。 電話やウェブサイトから英語・ベトナム語で注文できます。 1本69,000VNDで、3本以上で送料無料。
- ● ion-life(イオンライフ):ベトナム初のアルカリ性イオン飲料水です。 ウェブサイトや電話で英語・ベトナム語で注文できるサービスです。 ミネラルが豊富で、味がまろやか。 1本68,000VNDで、3本以上で送料無料。
水の宅配サービスは、大量の水を安価に購入できるメリットがあります。 デメリットは注文や受け取りに手間がかかることです。 また、空になったボトルは回収してもらうシステムがほとんどなので、捨てずに保管しておく必要があります。
筆者は4年間水の宅配サービスを利用していました。受け取りの時間合わせ・やりとりが、忙しい人には結構面倒かなと思います。19kgと結構重いので、設置も一苦労です。
しかし一時滞在時の飲料水入手には便利で安価なので、利用しやすいです。
浄水器の種類とメリット
ベトナムで水道水を飲用水として使う場合は、浄水器を設置することがおすすめです。 浄水器には、大きく分けて以下の2種類があります。
- ● 活性炭フィルター:水道水に含まれる塩素や有機物、臭いなどを吸着して除去する。 一番安価で簡単に設置できるが、ROフィルターに比べて除去率は劣る。
- ● RO(逆浸透膜)フィルター:水道水を高圧で逆浸透膜に押し込んで、細菌やウイルス、重金属などの不純物を除去する。 不純物の除去率は約99%だが、水道水の約3分の2が排水となるため、水道代が高くなる。 また、ミネラルも除去されるため、味が薄くなることもある。
筆者は4年間水の宅配サービスを利用していましたが、2020年から活性炭フィルターの浄水器を利用しています。
筆者の個人的な感想では、自宅での飲料水には浄水器が一番便利です。
宅配サービスでは、水のボトルの受け取り時間や保管場所が必要でしたが、浄水器はその負担がなく使用量を気にせずに使えるところがとても気に入っています。
浄水器を利用開始以降、胃腸の調子が良いように感じます。筆者には合っていたようです。
浄水器の設置や維持費用は種類によって異なりますので、ご自身のニーズや予算に合わせて、最適な浄水器を選ぶと良いと思います。
まとめ
これまで、ベトナムの水事情と安心の飲料水確保について、詳しくお伝えしてきました。 ベトナムの水道水は、品質が低く、飲むことはおすすめできません。 しかしミネラルウォーターや浄水器、水の宅配サービスなどを利用すれば、安全に水を飲むことができます。
ベトナムの水事情と安心の飲料水確保は、ベトナムで旅行・生活する人にとって非常に重要なテーマです。
この記事が、ベトナムでの健康で快適な滞在に役立つ情報となれば幸いです。