ベトナムにも伝統的な焼き物食器があるのをご存知ですか?
ベトナムの北部と南部で栄えたバッチャン焼きとソンベ焼きは、代表的なベトナム陶器であり、旅行客のお土産品としても大変人気な食器たちです。
今回は、北部のバッチャン焼きと南部のソンベ焼きの特徴や歴史についてベトナム在住者が解説していきます。
ハノイ市内や、ホーチミン市内で購入できるおすすめショップもご紹介していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
1.バッチャン焼きについて -ベトナム北部-
バッチャン焼きの起源と特徴
発祥地 | フンイエン省ザーラム群(旧バクニン省) |
きっかけ | 中国(明)への貢物を作る村として知られている |
時期 | 14世紀頃 |
バッチャン村は中国への貢物を作る村として名が残っていたとされています。一番古い文献ではおよそ14世紀頃から村が存在していたとされており、その歴史の深さが伺えます。
その後バッチャン焼きは日用品や装飾品、建築素材として繁栄していき長く存続されてきた焼物です。
バッチャン焼きの特徴と使用方法
特徴 | ・中国文化の影響を受けたデザインが多い ・小皿、大皿だけでなく醤油瓶、急須など種類が多い |
用途 | 食事用、装飾品、建築資材など幅広く利用されている |
バッチャン焼きは中国の文化が強く現れています。トンボや菊、蓮、金魚、竹などが多く描かれており、職人の腕がなる繊細なデザインが施されているところが魅力。日用品としての種類も豊富に生産されているのも特徴の一つです。
また、レンガ作りでも有名なバッチャン焼きは建築資材としても使われてきました。ハノイの旧市街などで建物の屋根を見ると、一部にバッチャン焼きが使用されているところを見ることができるかもしれません。
バッチャン焼きの人気の理由
焼物を作るバッチャン村が、2000年代にハノイ市公認の観光地として認められるなど、国が支援を行う程の歴史を持った焼物です。
作られた年代によって流通していたデザインなどが異なり、そのデザインの違いを嗜めることも魅力的ですよね。日用品として使える食器の種類が多いことから、選択の幅も広くお土産にも人気です。
また、高温で焼き上げるため比較的に丈夫な作りが主婦たちからも支持を得ている理由の一つにもなっているでしょう。
また、近年では電子レンジにも利用可能な「ニューバッチャン」とされるバッチャン焼きが誕生してさらなる人気を博しています。
2. ソンベ焼きについて -ベトナム南部-
ソンベ焼きの歴史と地域性
発祥地 | ビンズオン省(旧:ソンベ省) |
きっかけ | 中国の入植者が焼物を始めたことがきっかけ |
時期 | 17世紀頃 |
ソンベ焼きの発祥は、中国の入植者がベトナムの地で焼物を始めたことがきっかけでした。当時は庶民は使う親しみやすいデザインが多く、大量に生産されていた様です。しかし、戦争によってベトナムに混沌が訪れ、次第にソンベ焼きの職人が減少してきてしまったことから「幻の陶器」といった異名が生まれました。
ソンベ焼きの特徴と用途
特徴 | ・食器のベースはクリームやベージュの色味 ・中国文化やフランス統治時代の影響を受けたデザイン (吉祥柄やカメリアの花) |
用途 | 日用品として食卓に出てくる大皿が多い |
ビンズオン省の川で採れた土を原料に低温で焼き上げると、ほんのりしたクリーム色に染まります。
優しい色をベースに、中国でよく使われる吉祥柄や、フランス統治時代以降にはお皿の縁にカメリアの花が描かれるデザインが人気を出し、現在では定番の柄となりました。
ソンベ焼きの人気の背景
職人が激減したことにより生産数も減り、数年前までソンベ焼きは「幻の陶器」と呼ばれる様に市場から姿を消しかけていました。
そんな時に「Nang Ceramic」や「Tuhu Ceramic」などのブランドが誕生し、若者にも注目を浴びるようになってきています。
温かみのある色合いに、大判の柄が料理をとても映えさせてくれるので、今では一部のベトナム料理屋さんや主婦たちからも強い支持を受ける焼物となりました。
また、バッチャン焼きと同様に近年では電子レンジに利用可能な「ニューソンべ」が主に流通するようになり人気が出ています。
3. バッチャン焼きとソンベ焼きの比較
バッチャン焼き | ソンベ焼き | |
見た目 | トンボ、菊、蓮、金魚、竹のモチーフ | 吉祥柄やカメリアの花のモチーフ |
使用方法 | 日用品、装飾品、建築資材 | 主に日用品 |
国の補助 | ハノイ市公認の観光地として認定 | 特に保護や支援なし |
材料 | ホン川で採れた土、顔料、釉薬 | ビンズオン省で採れた土、顔料、釉薬 |
製法 | 1300°程度の高温で焼く | 1000°程度の低温で焼く |
中国の歴史を大きく受けたバッチャン焼きと、さらにフランス統治時代の影響も混ざり合ったソンベ焼きではデザインの雰囲気も異なります。
そしてバッチャン焼きが現在まで残っている理由の一つとして、日用品として以外の使用方法もされていたことが挙げられます。
当時の焼物は海外へ輸出されていましたが、やがて各国が自国で日用品の生産をする様になってから焼物の需要が激減していきました。しかし、バッチャン焼きについてはレンガなどの建築素材としても利用されていたこともあり、国内で長く存続し続けられたのかもしれません。
また、国の補助金を受けることがなかったソンベ焼きは自然と職人の減少に繋がってしまったとも言われています。
4. バッチャン焼きとソンベ焼きの購入方法
ここからは、ハノイ市内及びホーチミン市内で焼物を購入できるオススメのお店を紹介していきます。
バッチャン焼きのお店 -ハノイ市内-
LC Home
歴史のあるバッチャン焼きの独自ブランド。バッチャン焼きの中でも特に人気を博しており、ハノイ市内のセレクトショップでも良く見かけます。しかし、バッチャン村の店舗には比にならない種類のラインナップがある上に、価格も安価で手に入るので一度足を運んでみる価値あり。
・LC Home Map情報
Cerender
こちらもバッチャン焼き専門店。店内に入ると所狭しと食器が並んでいます。多数のデザイナーを抱えており、様々なテイストの食器に出会えるのが魅力のお店です。また、ホアンキエム付近に店舗が拡大されているので、アクセスしやすいところも嬉しいですね。
・1号店、2号店のMap情報
ハンザ市場
ホアンキエム中心地に位置する市場。建物の地下に進むと、バッチャン焼きを取り扱う市場が目に入ります。日本語を話せる店員さんがいたりと、多様な種類のバッチャン焼きが気軽に手に入るのはハンザ市場がおすすめの購入スポットです。
・ハンザ市場のMap情報
ソンベ焼きのお店 -ホーチミン市内-
Nang Ceramic
NHKの「世界はほしいモノにあふれている-ベトナム縦断!美しき手仕事を探す旅-」でも紹介された、陶芸家のHuynhさんが作るソンベ焼きのお店。消えつつあったソンベ焼きの伝統は、若き陶芸家の手によって再熱してきています。一つ一つが手書きで、とても繊細なデザインに食器好きは心を奪われること間違いなし。
・Nang CeramicのMap情報
Tuhu Ceramics
青を基調としたソンベ焼きの専門店。伝統的なソンベ焼きの手法で、現代のスタイルにあったデザインを施していて根強いファンを作っています。電子レンジに対応した「ニューソンべ」であるところもまた人気の一つ。海外発送も対応可能なので、大量に購入しても安心ですね。
・Tuhu CeramicsのMap情報
emMeo saigon
日本人経営のソンベ焼き店。最近はハノイ市にも新しく店舗を構え、日本人からも人気のお店。Nang Ceramicの陶芸家の方とタッグを組んで販促活動を行われており、ソンベ焼きを日本に広めた立役者といった声も。独特な色合いのお皿たちに、思わず手が伸びてしまいます。
・ホーチミン店、ハノイ店のMap情報
Nha Va Saigon
日本でもオンラインショップを持つ、ヴィンテージのソンベ焼きのセレクトショップ。市場に出回っている総数がそもそも少ないヴィンテージソンベですが、とても種類が豊富で見どころ満載のお店です。スタッフの方は日本語が上手だそうなので、日本人も訪問しやすいですよね。
・Nha Va SaigonのMap情報
5. まとめ
バッチャン焼きとソンベ焼きは、ベトナムの伝統的な焼き物食器であり、それぞれ独自の特徴と魅力を持っています。
歴史なるストーリーを知った上で購入すると、また趣深いですよね。
ハノイやホーチミンを訪れた際は、旅の思い出と共に是非お土産に購入してみてはいかがでしょうか?
この記事を参考に、自分に合った焼き物食器を見つけてみてください。