ベトナムの教育制度|日本との違いを解説

ベトナム人採用・関わり方

ベトナムの教育は、日本とは異なる独自の特徴を持っています。

義務教育から大学までどんなことを教えられ大切にしてきたかが、その後の就業態度や労働倫理につながっています。

この記事では、ベトナム人が社会人になるまでにどんな教育を受けたきたのか、日本の教育制度との違い、教育がベトナム人の就業態度や労働倫理にどんな影響を与えているかを解説しています。

上司部下としてベトナム人と上手に接したり、企業としてベトナム人の特性を理解し、適切な環境を整えたり適切な対応を行ったりするためにも、参考にしてください。

ベトナムの教育制度

学校体系と学年暦

ベトナムの教育制度は、義務教育から高等教育までの体系が整備されており、社会人になるまでの教育過程は次のように構成されています。

就学前教育  3歳から5歳までの幼児を対象に、幼稚園や保育園で基本的な社交スキルや学習の基盤を築く教育が行われます。
義務教育 初等教育 日本の小学校相当。6歳から11歳までの5年間。
前期中等教育 日本の中学校相当。11歳から15歳までの4年間。
後期中等教育 15歳から18歳までの3年間で、高校に相当。
高等教育 大学、短大、専門学校などが含まれ、学士号を取得するためには通常4年間の学習が必要です。

大学進学を目指す生徒は後期中等教育の後、全国統一試験を受ける必要があります。ベトナムの大学進学率は、2022年には42.22%です。

ベトナムの教育の特徴

全国統一試験: 大学進学のための試験は全国で統一されており、成績が進学先を決定します。これにより、全国的な教育水準の均一化が図られています。

職業教育: 中等教育後には職業教育機関があり、専門的な技術や知識を身につけることができます。職業訓練学校や中等技術職業学校が設置され、実践的なスキルを学ぶ機会が提供されています。

教育熱心な文化: ベトナムでは教育が非常に重視されており、家庭の教育支出は高い割合を占めています。特に数学や英語の教育に対する関心が強く、国際数学オリンピックなどで毎年メダルを獲得するなど成果も顕著です。

授業時間数と教科の比重: ベトナムの小中高の合計授業時間数は約510時間と、日本の約735時間と比べて少なくなっています。国語や算数などの主要5教科に比重が置かれ、理科や体育の時間が少なくなっています。

教育制度の変化と課題

近年、ベトナム政府は教育制度の改善に取り組んでおり、特にSTEM教育(科学、技術、工学、数学)の推進が進められています。

一方で、都市部と地方での教育格差や、教育内容の実践的な適用に関する課題も残っています。特に、デジタル教育の導入が進む中で、オンライン学習の受け入れが進まないという現状もあります。

ベトナムの教育制度は、経済成長とともに進化し続けており、今後の発展が期待されています。教育を受けた若者たちは、国際的なビジネス環境でも競争力を持つ人材として活躍することが求められています。

ベトナムの教育の特徴と就業へ与える影響

学習意欲と向上心

ベトナムの教育制度は、数学や英語などの科目に重点を置いており、学生は高い学力を求められます。このため、ベトナム人は一般的に学習に対して真剣であり、向上心が強い傾向があります。

こうした教育により、ベトナム人は日本人と同様に真摯に学業や仕事に向かう傾向があり、日本企業でも迎え入れられやすい環境が整っています。

職場において自己成長を求める姿勢があり新しい技術の習得に積極的です。特に技術職においては、単純作業ではなく、新しい挑戦を求める傾向が強く、キャリアアップを目指して転職を考えることも多いです。

所属意識と労働観

教育を通じて、ベトナム人は家族やコミュニティの重要性を強く認識しています

このため、職場でも同僚や上司との関係を重視し、チームワークを大切にする傾向があります。職場の人間関係を良好に保つことが、仕事へのモチベーションを高める要因となっています。

一方で、ベトナム人は家庭を重視するため、残業に対する意識が日本人とは異なります。多くの場合、家庭の時間を優先し、過度な残業を避ける傾向があります。これにより、企業が残業を強いる場合、離職のリスクが高まることがあります。

実践的な知識の適用

ベトナムの教育制度では、理論的な知識が重視される一方で、実践的なスキルの習得が不足していることがあります。これが、職場での知識の適用に課題をもたらすことがあります。特に、教育で学んだ内容を実際の業務に活かすことが難しいと感じることが多いです。

そのため、企業側は教育や研修を通じて、実務に即したスキルを身につける機会を提供することが重要です。定期的な研修や実地訓練を行うことで、ベトナム人労働者が職場でのパフォーマンスを向上させることが期待できます。

ベトナムの教育制度と労働倫理への影響

勤勉さと真面目な労働態度

ベトナムの教育制度は、勤勉さや真面目さを重視する文化を育んでいます。学生は学校での学習を通じて、努力や忍耐の重要性を学びます。このため、労働市場に出た際、ベトナム人は一般的に真面目に仕事に取り組む姿勢を持っています。

教育を受けたベトナム人は、職場での規律や時間厳守を重視し、業務に対する責任感が強い傾向があります。これにより、企業は彼らの労働倫理を高く評価することが多いです。

規律と社内規範の重視

教育を通じて、ベトナム人は規律や社内規範を重視する意識を持つようになります。これは、企業における勤務時間の遵守や社内ルールの徹底に繋がります。

特に、職業訓練校や専門学校での教育は、実践的なスキルとともに、職場での行動規範を学ぶ重要な場となります。これにより、企業は労働者が規則を守り、円滑に業務を遂行することを期待できます。

安全意識と職場環境

日本と比較して、ベトナムでは安全や衛生に関する意識が低いとされることがあります。特に、整理整頓や身だしなみの面で、日本の【5S(「整理」「整頓」「清掃」「清潔」「しつけ」)】などの概念が浸透していないため、企業は安全教育や職場環境の改善に努める必要があります。

教育制度から読み解くベトナム人労働者が得意な点・苦手な点

ベトナム人の得意な点

勤勉さと真面目な労働態度: ベトナムの教育は勤勉さや真面目さを重視する文化を育んでおり、ベトナム人は一般的に真面目に仕事に取り組む姿勢を持っています。

向上心と新しい技術への意欲: ベトナム人は常に自己改善を目指し、職場でも新しい挑戦を求める姿勢が見られます。

チームワークとコミュニケーション: ベトナムの教育は協調性やチームワークを重視する傾向があり、職場でも同僚や上司との良好な関係を築くことが期待されます。

規律と社内規範の重視: ベトナム人は規律や社内規範を重視する意識を持ち、勤務時間の遵守や社内ルールの徹底に繋がります。

日本への好印象と技術習得への意欲: ベトナム人は日本に良い印象を持ち、日本の技術を学びたいという意欲が強いです。

ベトナム人の苦手な点

仕事に対する考え方の違い: 昼休みの長さや残業に対する意識の違いから、日本企業との摩擦が生じる可能性があります。

安全意識の低さ: ベトナムでは安全や衛生に関する意識が低いため、日本の職場基準に適応するのが難しい場合があります。

実践的なスキルの不足: ベトナムの教育では理論的知識が重視される一方で、実践的なスキルの習得が不足していることがあります。

まとめ

ベトナムの教育制度は、幼児から大学までの段階が整備されています。義務教育は9年間で、全国統一試験が進学先を決定します。職業教育も充実しており、熱心な教育文化が根付いています

こうしたベトナムの教育制度は就業態度・労働倫理に多様な影響を与えています。

勤勉さと真面目な労働態度、新しい技術への意欲、チームワーク、規律重視は良い点ですが、仕事に対する考え方の違い、安全意識の低さ、実践的なスキルの不足を埋め合わせる必要があります。

企業はこの特性を理解し、ベトナム人が活躍しやすい職場環境を整えたり適切な対応を行うことが求められるでしょう

本記事では、多くのベトナム人に共通する傾向とその根拠となる教育制度について解説しました。ベトナム人の全体的な特徴を掴むには参考になるかと思います。

但しひとえにベトナム人といえども、性別や年齢、出身地(北部or中部or南部)をはじめ、育った家庭環境、経験などで性格や価値観は一人一人違うことは忘れないでください

この記事がお役に立てば幸いです。

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