ベトナムと日本の関係:歴史、現在、未来を探る

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 ベトナムと日本…二国の関係は、実は、何百年にもわたる歴史の積み重ねで築かれています。

ベトナムの街角で出会う日本食レストランや、日本の街中で目にするベトナム料理店、今では何気ない光景がこの歴史を象徴しています。この記事では、そんなベトナムと日本の関係を紐解き、過去から現在、そして未来へと続く道のりを探ります。

筆者自身、現地に約9年在住しているため、この両国の関係を肌で感じています。古代の貿易船がもたらした文化交流から、現代のグローバルなビジネスパートナーシップまで、その変遷をリアルな視点から解説します。

この記事を読み終えた後には、きっとベトナムと日本の関係性について新たな理解と共感を得られると思います。そして、それがただの学びにとどまらず、あなたの日常に新しい視点やインスピレーションをもたらすことを願っています。さあ、ベトナムと日本の歴史と未来の旅に一緒に出かけましょう。

日本とベトナムの歴史的背景

1593年に日本人によって建設されたホイアンの日本橋(来遠橋)

古代からの交流の始まり

日本とベトナムの交流は、実は古代から始まっています。

日本の遣隋使や遣唐使が中国経由でベトナムに訪れた記録が残っており、すでにこの時代から両国の文化交流が始まっていました。

例えば、736年にはベトナムの僧侶・仏哲が日本に訪れ、林邑楽(りんゆうがく)という舞楽を伝えました。この舞楽は、日本の宮廷や寺院で演奏されるようになり、文化的な交流の一端を担いました。他にも、ベトナムの古都フエには、日本の影響を受けた建築物や芸術品が存在し、その歴史的なつながりを感じることができます。

753年には日本の遣唐使である藤原清河(ふじわらきよかわ)と阿倍仲麻呂(あべのなかまろ)が帰国途中に安南(現在のベトナム)に漂着し、阿倍仲麻呂はその後、ベトナムで重要な役職に就くことになります。このように、古代から両国は人々の行き来を通じてつながりを持っていました。

16世紀には、日本の商人たちがベトナムの港町ホイアンに渡り、日本人町を形成しました。ここでの貿易活動は両国にとって重要な経済的基盤となり、絹や陶器、香辛料などの貴重な商品が取引されました。

近代の歴史的な出来事と影響

19世紀には、ファン・ボイ・チャウ(Phan Boi Chau)という人物が日本に来て、フランス植民地からの独立運動のため、武器の援助を求めました。彼はベトナムの独立運動を進めるために多くの若者を日本へ留学させました。この留学運動は、ベトナムにおける知識人やリーダーたちの育成につながり、日本の明治維新で学んだ知識をもとに独立運動を活発化させました

1940年日本はフランス領インドシナ(現在のベトナム)に進駐し、1945年3月にはフランスの主権を排除しました。日本がベトナムの独立運動家に対して支持を表明したため、独立運動家たちは日本軍の力を借りてフランスの勢力を排除し、一気に独立を達成しようと考えました。

しかし、日本は資源確保のためにベトナムの農産物や鉱物資源を大量に輸出し、現地の農業や産業は日本の戦争需要に従属する形になり、多くの労働者が強制労働させられました。自然災害が重なったこともあり、ベトナムでは物資不足が深刻化し大飢饉が発生し、ベトナム社会に深い傷跡を残しました。

不信感が高まる中、ホー・チ・ミン率いるベトナム独立同盟(ベトミン)は、日本占領下で独立活動を強化します。1945年8月、日本が敗戦すると、その後すぐにベトナムでは「八月革命」が起こり、1945年9月2日、ホー・チ・ミンが新たな政府を樹立しました。

1973年日本とベトナムの間で正式な国交が樹立されてから、両国の関係は急速に発展しました。特に1986年ドイモイ政策実施以降、日本はベトナムの経済改革を支援し、多くの日本企業がベトナムに進出しました。

日本とベトナムの現在の関係

経済的なつながり

日越間の貿易

2022年には両国間の貿易総額が470億ドルを超え、日本はベトナムの第四位の貿易相手国となりました。この成長は、貿易自由化の積極的な取り組みによるものであり、過去30年間で貿易が90倍以上に増加しました。

日本はベトナムの重要な輸出先であり、電子製品や繊維製品、自動車部品などが主な輸出品目です。特に、スマートフォンや電子機器の輸出が増加し、ベトナムは日本にとって重要な製造拠点となっています。一方で、日本からベトナムへの輸入品は機械や技術製品が多くなっています。

日本からの投資

日本からの直接投資は、ベトナムの経済成長に大きな影響を与えています。日本はベトナムの第三位の外国直接投資(FDI)供与国でもあり、2022年までに約700億ドルの投資が行われました。

特に製造業インフラ整備の分野で日本企業の進出が目立ちます。これにより、ベトナム国内での雇用創出や技術移転が進み、地域経済の活性化が図られています。最近では製造業だけでなく、大手スーパー銀行も積極的に進出しています。

このように、日本からの投資は多様化しており、双方にとって利益をもたらす要因となっています。ベトナム政府も日本からの投資を積極的に支援し、投資環境の整備に努めています。

ビジネスパートナーシップ

日系企業とベトナム企業の間でのビジネスパートナーシップが強化されています。特に、日本企業はベトナムでの人材育成や技術移転にも力を入れており、双方の経済発展を支えています。

例えば、地方自治体間で約100件の協力関係が築かれ、多くの協定が締結されています。これにより、地域レベルでの交流や協力が進み、経済活動が活発化しています。

人材交流

日本とベトナムの間での人材交流は、近年ますます活発化しており、両国の関係を深める重要な要素となっています。特に、「技能実習生制度」を通じた交流は、経済的な結びつきだけでなく、文化的な理解を促進しています

日本の「技能実習生制度」では、多くのベトナム人が日本で技術を学びながら働いています。この制度は、日本企業の人手不足解消にも寄与し、研修生たちは専門技術を習得し、母国に戻って新たなビジネスチャンスを創出しています。

留学生も増加傾向にあり、2020年には約62,000人のベトナム人が日本で学んでいます。彼らは日本文化やビジネス環境に触れることで、国際的な視野を広げ、日本企業への就職機会を増やしています。さらに、日本企業が求める高度な技術力を持つベトナム人エンジニアも増えており、彼らは日本での経験を通じて国際的なスキルを磨いています。

文化交流

観光

観光分野でも両国は密接な関係を築いています。毎年多くの日本人観光客がベトナムを訪れ、美しい自然や豊かな文化を楽しんでいます。また、日本を訪れるベトナム人観光客も年々増えており、そのおもてなし文化や歴史的な観光地を満喫しています。2023年には53万人以上のベトナム人が日本を訪れました

アニメ

ベトナムにおける日本アニメの人気は、文化交流の重要な側面を形成しています。1992年に『ドラえもん』が初めてベトナムに上陸して以来、日本のアニメはベトナムの子どもたちにとって心の拠り所となっています。

近年では『名探偵コナン』や『ONE PIECE』など、新しい作品が続々と人気を集めています。特に『ONE PIECE』は、翻訳スピードが向上したことで、ほぼリアルタイムで楽しむことができるようになり、若者たちの間で熱狂的な支持を得ています。アニメを通じて、日本語を学び始める人や、日本への留学を希望する人も増えており、日本文化への関心が高まっています。

また、日本アニメは単なるエンターテイメントにとどまらず、ベトナム社会における文化的アイコンとなっています。例えば、ドラえもんをモチーフにした商品が多く販売されており、日常生活の中で日本文化を感じる機会が増えています。さらに、コスプレイベントやアニメ関連のフェスティバルも盛況で、多くのファンが集まり、交流を深めています。

このように、日本アニメはベトナムにおける文化交流の架け橋となっており、人々の心をつなぐ重要な役割を果たしています。

日本とベトナムの政治的なつながり

2022年日越首脳会談。Tuoi Tre紙より引用(https://tuoitre.vn)

二国間の外交関係

1973年に日本とベトナムの間で正式な国交が樹立以来、絶え間なく強化されてきました。冷戦時代の厳しい国際情勢を乗り越え、両国は平和と安定のためのパートナーシップを築いてきました。

特に21世紀に入り、ベトナムは急速な経済成長を遂げ、日本はその成長を支援し続けてきました。現在、ベトナムと日本はアジア太平洋地域において重要な戦略的パートナーシップを築いており、定期的な首脳会談や高官レベルの対話を通じて、経済、安全保障、環境問題など幅広い分野で協力を強化しています。

重要な協定や条約

両国の関係をさらに強固なものとするため、多くの重要な協定や条約が締結されています。

例えば、2009年には「日越経済連携協定(EPA)が発効し、これにより貿易と投資の障壁が大幅に減少し、両国間の経済交流が一層活発になりました。

また、2014年には「包括的戦略パートナーシップ協定が締結され、これにより両国は経済だけでなく、安全保障や文化交流など、あらゆる分野での協力を深化させることを約束しました。

2020年には「日越経済連携協定が発効し、日本からの輸出品に対する関税の引き下げなど、貿易や投資の自由化が進められました。

2021年には「デジタル経済に関する共同宣言が発表され、デジタル技術を活用した新しい協力の形が模索されています。

このように、ベトナムと日本は目標と価値観に共有部分があり、互いにとって不可欠なパートナーであることを示しています。

日本とベトナムの未来展望

今後の経済関係の可能性

ベトナムと日本の経済関係は、さらなる深化が期待されています。

両国は多くの分野で協力の可能性を持っており、特に技術革新デジタル経済環境保護や持続可能な開発が挙げられます。両国は共通の課題に対して協力し、環境技術の共有や再生可能エネルギーの推進を図ることが期待されています。また、医療や福祉の分野でも協力が進むことで、両国の、そして国際的な課題解決に貢献することが望まれています。

文化交流の拡大

文化交流も引き続き重要な役割を果たします。

両国の人々が互いの文化を理解し尊重することで、より深い絆が築かれます。今後は、アニメだけでなく、さらに多くの文化イベントや教育プログラムが企画されたり、オンラインプラットフォームを活用したバーチャル文化交流もますます普及したりすれば、より多くの人が互いに理解・協力するかもしれません。

結論:まとめ

ベトナムと日本の関係は、歴史的なつながりから現在まで、深い絆で結ばれています

経済的な協力や文化交流、政治的なパートナーシップがこれまでに築かれてきた土台となり、両国は互いにとって欠かせない存在となっています。この記事を通じて、両国の多様で豊かな関係性が浮き彫りになりました。

未来に向けて、ベトナムと日本の関係はさらに深化し、経済、文化、政治のあらゆる分野での協力が期待されます。特に、技術革新や環境保護といった新たな分野でのパートナーシップは、両国の発展にとって大きな意味を持つに違いありません。また、個々の市民同士の交流が続くことで、草の根レベルでの理解と信頼も一層強まると考えられます。

ベトナムと日本が共に手を取り合い、未来に向けて進んでいくことを期待したいですね。
この記事が皆様のお役に立てば幸いです。

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