「東南アジアの移住ならおすすめはどこの国?」
「ベトナムとタイのどちらが移住しやすいか知りたい!」
東南アジアの就職先・移住先として、ベトナムの比較候補に挙がるのがタイです。
この記事では、ベトナムホーチミンへ移住して8年の筆者が、移住するならベトナムとタイどちらが移住・生活しやすいのか、10個の項目で比較しながら紹介していきます。
- 1.ビザ取得と滞在期間
- 2.物価(家賃、食事の価格)
- 3.交通機関
- 4.治安
- 5.食事
- 6.言語(英語が通じるか)
- 7.日本人コミュニティ
- 8.自然と気候
- 9.医療と教育
- 10.祝日の数
この記事を読めば、ベトナムとタイのどちらへの移住が自分に合っているか、チェックすることができます。
1.ビザ取得と滞在期間
ベトナム:就労目的なら長期滞在できる
短期ビザ取得は比較的容易で、ノービザ最大45日間、観光ビザは最大3ヶ月間滞在可能です。
ただし移住・就職するためには、長期滞在のビザが必須です。
ベトナムは長期滞在のビザの種類が少ないのが現状です。ベトナム長期滞在は、家族帯同ビザを除き、現地企業で働くかベトナム人と結婚することがほぼ必須条件になります。
リタイアメントビザや富裕層優遇するビザがベトナムにはないため、定年退職後に年金で夫婦で移住することは現状では困難です。
就職が目的であれば、他国と比較してさほど難しくはありません。
※ベトナムでの労働許可証取得条件についてはJETRO公式HP(外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用)を参照下さい
タイ:富裕層が滞在しやすい&就労無しで長期滞在可
短期ビザ取得は比較的容易で、ノービザ最大30日間。観光ビザは3ヶ月滞在可能です。
タイは、長期滞在ビザの種類が豊富でビザを取得しやすい国です。長期滞在のビザの具体例として:
- ● ノンイミグラントビザ・カテゴリーB(就労ビザ)
- ● リタイアメントビザ
- ● タイランドエリート
- ● 労働許可証
例えば、2022年に導入された長期滞在ビザ(LTR)があり、外国人の富裕層や高度な技術を持つ人材を対象としています。最初は5年滞在可能で、条件を満たせば5年延長することが可能です。現地企業で働かなくても長期滞在ビザ取得が可能です。
リタイアメントビザは、定年退職後の年金で夫婦が取得可能です。
60万バーツ(約240万円)支払うことで、5年以上有効なタイランドエリートビザを取得することも可能です。
ビザの点ではタイの方が自由度が高いと言えます。しかしベトナムでも、就職希望者であればビザの難易度がタイと同レベルまで下がります。
2.物価(家賃、食事の価格)
家賃:ベトナムとタイはほぼ互角
家賃に関しては、ベトナムにおいてもタイにおいても、どの街のどのエリアにどのタイミングで住むかによります。例えば大都市の便利な地域に住むと、家賃は高くなります。
全く同じ条件で比較することはできませんが、ベトナムでもタイでも都市部の平均的な1人暮らしだと家賃6万円くらい、ファミリーだと約8〜13万円程度になります。
ただしホテル宿泊の相場はベトナムの方がタイより安い傾向にあります。
食べ物:ベトナムもタイも日本の約3分の1程度
食べ物の相場はタイもベトナムもほぼ同じレベルです。
どちらの屋台の食べ物は、200円から400円程度、日本食は600円から1,200円程度が相場。日本食材は日本よりも割高です。
物価の面ではベトナムもタイも同じレベルといえます。
3.交通機関
ベトナム:鉄道は発展途上、しかし配車サービスが充実
ベトナムの鉄道網は発展途上であり、路線の整備や近代化が進んでいる最中です。都市間の移動に統一鉄道はありますが、地下鉄はハノイにあるのみです。そのためベトナムの公共交通機関は路線バスがメインです。また、ベトナム人の一般的な移動方法は、自家用車やバイク、バス、バイクタクシーとなります。
しかしこの文章を読んで「自分で自動車やバイクは運転できない」と思った方も心配無用です。
ベトナムでは、Grabタクシーなどの配車サービスがインフラとしてしっかり機能しているので、それほど苦労なく日常生活をこなすことができます。
空港から街への移動はバスかタクシーがとても便利ですし、書類や食べ物の配達などまで配車サービスがになってくれます。
しかしベトナムの道路・交通機関のマナーについては、それほど良くないためストレスになる方もいるかもしれません。ベトナムでは歩行者は弱者であり、大きい車両優先のため、車が歩行者のために止まってくれるということはありません。バスや列車の中もうるさいことがあり、ゴミに対する倫理観も日本とは大きく異なっているのが現状です。
タイ:交通機関もマナーも比較的良い
タイ、特にバンコクは交通機関が充実しています。
タイの地下鉄や電車が発展しており、特にバンコクには広い路線網があります。スカイトレイン(BTS)、地下鉄(MRT)は街中に張り巡らされており、たいていの場所は公共交通機関でアクセスすることが可能です。空港路線も充実しており、バンコクのスワンナプーム空港、ドンムアン空港のどちらからでも街中まで電車での移動が可能でとても便利です。BTSの運賃は17〜47バーツ(約70〜200円)です。
さらにタイは交通のマナーが比較的良いです。これはタイがベトナムより経済的に少し進んでいるためかもしれません。
駅構内の案内表示やアナウンスも英語で表示され、外国人や旅行者にとっても利便性が高いです。
しかし、タイの交通渋滞はとても深刻で世界的にも渋滞がひどい都市で有名になるほど。
公共交通機関と交通マナーは、タイの方が利便性・マナーの両方で勝ります。しかし、ベトナムは配車サービスが浸透しており、タイより渋滞が限定的であると言えるでしょう。
4.治安
どちらも治安は比較的安定しています。
重大犯罪は少ないですが、一部のエリアではスリなどの犯罪が発生することもあります。
「夜間の一人歩きを避ける」「危険な地域に入らない」という海外での安全ルールを守っていれば、ベトナムもタイも治安を心配することはあまりありません。
5.食事
ベトナム:日本人に合う優しい味付け
ベトナム料理は、日本人にとって食べやすい味付けです。
ベトナム料理はスパイスや調味料の使用頻度が控えめで、優しい味が特徴です。
全体的に味付けはマイルドですが、ヌクマム(魚醤)と香草はパンチがあります。ヌクマムの匂いは強いですし、香草は好みが分かれます。
タイ:スパイシーな味付け
タイ料理は辛味や酸味が強く、刺激的な味付けが特徴です。
タイ料理はトムヤムクンに代表されるように、かなりスパイシーです。お腹が弱い人は、スパイシーすぎてお腹を壊す人も多いようです。
タイ在住者によると「辛くしないで」と伝えても日本人にとってはスパイシーになるそうなので、タイ料理はとにかくスパイシーさに注意が必要です。
個人的には両方大好きですが、ベトナム料理の方がタイ料理より日本人に合う気がします。
6.言語(英語が通じるか)
ベトナム:空港やホテル以外で英会話は期待できない
現地語の習得は難しいため、どうしても英語に頼る機会が多くなってしまいます。
ベトナムの公用語はベトナム語のため、ローカルの屋台はベトナム語しか通じない場合が多いです。カフェであっても、店員さんによっては英語対応が難しい場合もあります。
空港やホテルのカウンターでは英語が通じますが、一般人の英会話のレベルはそれほど高くありません。
ただ、ベトナム語はアルファベットがベースになっているので、なんとなく読めるので助かります。
タイ:ホテルや観光地では英語に慣れている人も
タイの公用語はタイ語のため、どのエリアでも英語が通じるとはいえません。
観光地など海外の人が多く訪れるエリアや、観光に携わる人は英語に慣れています。しかし、一般人の英会話レベルは日本と同等もしくはそれ以下です。
さらに、文字がタイ文字なので、看板やメニューを読めないのが難点です。
英語の通用度は両国ともそこそこと言えそうです。
7.日本人コミュニティ
ベトナム:フリーペーパーや日本語コミュニティあり
2022年10月1日時点のベトナムに在住する日本人は約21,819人です。
スポーツや趣味のコミュニティ、県人会、婦人会などがあります。
日本語のフリーペーパーが定期発行されています。その中でコミュニティに関する情報を得ることができます。
タイ:コミュニティの種類や規模が大きい
2023年10月1日現在、タイに在住する日本人は約72,308人です。
タイの方が圧倒的に在住日本人の数が多いため、ベトナムよりタイの方が日本人のコミュニティを探すのが簡単です。スポーツや趣味のコミュニティ、県人会などの種類や規模も大きいです。
日本語のフリーペーパーや日系レストランの数はタイの方が圧倒的に数もバリエーションも多いので、ベトナムよりタイの方が日本に近い生活ができるといえます。
8.自然と気候
ベトナム:自然災害が少ない
美しい自然景観が豊富で、ハロン湾やフエの古都などがあります。
ベトナム中部は台風や洪水の影響を受けますが、全体的に地震や自然災害が少ないことが特徴です。
気候は南部が熱帯で一年を通して暖かく、北部は四季があります。
タイ:一年を通して温暖な気候
美しいビーチや島々があり、プーケットやコサムイ島などが人気です。
気候は熱帯のため雨季と寒気がありますが、温暖な気候が続き年間平均気温は29℃と温暖で過ごしやすく快適です。
9.医療と教育
ベトナム:難しい手術は隣国への移送も
医療施設は発展途上であり、一部の都市で高度な医療が受けられます。近年の医療施設の発展により少なくなりましたが、治療の難易度によっては近隣国(タイ、シンガポール)へ緊急移送されることもあります。
教育は普及しており、日本語学校は中学校まで受けられます。高校以降は、帰国して日本の高校に入学する生徒と、高校から現地のインターナショナルスクールに行く生徒がいます。
タイ:高度な医療まで対応
医療施設は発展しており、バンコクなどでは高度な医療が受けられます。
教育は整備されており、日本語学校は中学校まで受けられます。高校以降は、帰国して日本の高校に入学する生徒と、高校から現地のインターナショナルスクールに行く生徒がいます。
10.働き方と祝日の数
ベトナムとタイでは、働き方や祝日の数にも差があります。
年間の平均祝日数はタイの方が約5~6日ベトナムよりも多くなっています。
国名 | 年間祝日数(平均) | 主な祝日の内容 | 備考 |
---|---|---|---|
ベトナム | 約11日〜13日 | テト(旧正月)建国記念日労働者の日 | 旧暦行事が中心 |
タイ | 約16日〜19日 | 仏教関連(マカブーチャ、ウィサカブーチャ)王室関連(国王誕生日)正月・水かけ祭(ソンクラーン) | 年によって変動あり(太陰暦基準) |
ベトナム:旧正月以外の休日が少ない
ベトナムは、世界的にみても年間祝日が少なめの国で、テト(旧正月)という1番の大型連休を除くと、年間の祝日は3~5日程度しかありません。
そのため、テト休暇は国民総出で楽しみにしており、旅行に出かけたり、故郷に帰る人も多いようです。
近年、都市部では時間外労働や休日出勤も増加傾向にあり、国民性として勤勉、働き者という特性があります。
タイ:追加の振替休日が設定されることも
タイの祝日は年間で散りばめられており、小分けで休暇を取ることができるのが魅力的で、日本の祝日と似ています。
祝日の数も日本の16日と同じか少し多い程度です。
また、政府が追加の「振替休日」を柔軟に設定する傾向もあります。
「マイペンライ精神」(細かいことは気にしない)という国民性が働き方にも影響しており、おおらかな国民性が特徴です。
労働者の権利がある程度保護されていることから、残業=勤勉という価値観は弱いようです。
ワークライフバランスを保ちつつ、ゆったりとした仕事環境を重視する人が多い特徴があります。
11.比較とまとめ
総合的なベトナムとタイの比較
ここまで、ベトナムとタイの様々な項目に分けてご説明してきました。二つの国を比較表にしてみると下記の通りとなります。
ベトナム | タイ | |
ビザの取得 | △:就職用であれば比較的取れる | ◎:種類が多い |
物価の安さ | ◎ | ◎ |
交通機関の利便性 | ○:配車サービスが充実 | ○:公共交通機関が充実 |
治安 | ◎ | ○ |
食事の馴染みやすさ | ◎:日本人に馴染みやすい | △:辛い料理が多い |
言語 | ○:文字がアルファベットに近い | △:文字が独特で読解が難しい |
自然と気候 | ○ | ○ |
医療 | ○:高度な理療は隣国へ頼る必要あり | ◎:医療も先進的で安心 |
教育 | ◎ | ◎ |
祝日 | 少なめ(大型連休中心) | 日本と同等 |
働き方 | 勤勉・残業や休日勤務も増加 | ワークライフバランスを重視 |
ベトナム:日本人に合う食事・国の経済成長率が魅力的
ベトナム人は、「まじめ」で「勤勉」という特徴があります。また、地理的に地震や自然災害が少ないことも住む上でのメリット。気候は南部が熱帯、北部には四季があります。物価は安価で、1ヶ月の生活費は日本の3分の1程度です。食事は日本人になじみやすい薄味のものも多くあります。約2.1万人(2022年現在)の日本人が在住していて、都市中心部は日本食のレストランも充実しています。
現在ベトナムの経済成長は著しく、これからの可能性を秘めた国です。ともに成長をしていきたいアグレッシブな方に向いている国と言えるでしょう。
タイ:ベトナムより日本に近い生活が可能
「ほほえみの国」タイ人は、比較的多くの人が穏やかで優しく接してくれます。雨季と寒気がありますが温暖な気候が続き、バンコクの年間平均気温は29℃と温暖で過ごしやすく快適です。物価は安価で、1ヶ月の生活費は日本の3分の1程度です。料理はスパイシーです。約7.2万人(2023年現在)の日本人が在住しているため、日本食レストランも充実しており、現地のコミュニティでの情報交換が容易です。
海外で働きたい意欲があり、先進的な国で尚且つ日本同等レベルの生活を求める方にはタイがおすすめです。
まとめ
今回は、ベトナムとタイの2つの国に対して各方面から比較をしていきました。
気候や物価について、ベトナムやタイの両国は非常に似ています。
ビザに関しては、タイの方が自由度が高いです。しかし、ベトナムは長期滞在ビザの要件がシビアですが、ベトナムで働ける方であれば克服できます。
その他も細かい条件で優劣はあるものの、両国ともに東南アジアでもトップクラスで働きやすい国と言えるでしょう。
もちろん上記以外の側面もありますし、何より自分のフィーリングに合うか、ということをよく確認することが、移住・海外転職の成功のカギになりそうです。
この記事が皆さんの移住先決定のお役に立てば幸いです。