ベトナム人が日本で働く理由とは?ベトナム人労働者増加の背景と課題

ベトナム人採用・関わり方

厚生労働省が発表した「外国人雇用状況」の届出状況まとめ(2023年現在)では、日本で働く外国人労働者数は約204万人(前年約182万人)です。国籍別の内訳ではベトナム人の割合が最も多く、全体の約25%(51.8千人)を占めており、その人数は年々増加傾向です。

この記事では、ベトナム人が日本で働く理由やその魅力、そして直面する課題について詳しく解説します。日本で働くベトナム人労働者の実態を知ることで、彼らの願いや課題を理解し、より良い労働環境を築くためのヒントを提供することを目的としています。

ベトナム人が日本で働く理由

ベトナム側の理由としては、「海外で働くベトナム人から家族への送金が、ベトナム経済の一部を支え」ており、「政府としても労働者輸出国を目指し、海外への労働者送り出しを促進している」といった要素が影響しています。

日本側の理由としては、「日本の労働力不足を補うための政策」が影響しています。

では、ベトナム人労働者が日本で働く主な理由には何があるのでしょうか?下記の3つが考えられます。

経済的な理由 数倍の賃金を求めて

日本の給与水準はベトナムに比べて非常に高く、多くのベトナム人にとって大きな魅力です。日本での平均給与はベトナム国内の賃金の数倍なので、家族への送金や生活の向上を目指す人々にとって理想的な選択肢となっています。

一人当たりGDPベースで見ると、ベトナムのは約4,163 USD(2022年)、日本はこの8倍(33,823 USD)です。初任給ベースで見ると、ベトナムは約2.5〜3万円前後です。日本の新卒の初任給は約15〜17万円ですから、ベトナムの5〜6倍です。

仕事の見つけやすさも選択の要素の一つになっています。

ベトナムでは大卒を含めた15~24歳の若年層の失業率は7%台に上ります(日本の失業率は現在3%前後)。ベトナムの大学進学率は30%ほどですが、大学を卒業しても就職に困る若者が増えています。

日本では、業種を限定しなければ、スキルのない外国人労働者でも就職は難しくありません。特に介護や飲食業界などは常に人手不足です。まじめに働いてくれる外国人労働者にとって、海外で働くチャンスです。

教育とスキル向上 向上心のある若者たち

日本で働くことで、ベトナム人は高度な技術や専門知識を習得する機会を得られます。日本の企業は研修制度が充実しており、キャリアアップを目指す人々にとって貴重な経験となります。

ベトナムとは違う環境下でより自身の可能性を伸ばしたい、日本の技術を学びたいと考える若者は少なくありません。

文化的な魅力 日本は身近な存在

多くのベトナム人は親日感情を持ち、日本文化に強い興味を抱いています

2023年に外務省の「海外における対日世論調査」によると、「あなたの国の友邦として、今日の日本は信頼できると思いますか。」という質問に対して、ベトナム人の68%が「とても信頼できる」、29%が「どちらかというと信頼できる」と回答しています。

日本製品や日本の漫画・アニメが浸透していたり、バイクを「Honda」と呼んだり、国際援助が多かったりすることから、日本へ好印象を持つ人が多くいます。

日本での生活を通じて、日本の生活や仕事の習慣を直接体験できることは彼らにとって大きな魅力です。日本の安全で清潔な環境も、ベトナム人にとって魅力的な要素の一つです。

このように、経済的なメリット教育とスキルの向上、そして文化的な魅力が、ベトナム人が日本で働く主な理由となっています。

日本での生活と仕事の実態

労働環境と待遇

日本の労働環境は、ベトナム人労働者にとって非常に魅力的です。

多くの企業が整った職場環境を提供し、労働者の健康と安全を重視しています。また、労働時間や休暇制度も法律で厳格に規定されており、労働者の権利がしっかりと守られています。特に、技術研修生制度を利用するベトナム人にとって、日本での経験はスキルアップの大きなチャンスとなります。

社会保険や福利厚生の充実

生活のしやすい環境も日本で働く魅力の一つです。

日本の社会保険制度は非常に充実しており、健康保険や年金制度、労災保険などが整備されています。これにより、ベトナム人労働者も安心して働くことができます。また、多くの企業が福利厚生を充実させており、住宅手当や交通費支給、さらには家族手当なども提供しています。これらの制度は、労働者の生活の質を向上させる重要な要素です。

生活費と送金

多くのベトナム人労働者は、共同生活を送ったり、節約術を駆使することで、出費を最小限に抑え、家族への送金を行っています。

日本での生活費は、特に都市部では高い傾向にありますが、その分給与も高いため、生活費を賄うことができます。 日本で得た収入をベトナムに送金することで、家族の生活を支えることができるのは大きなメリットです。送金サービスも充実しており、迅速かつ安全に送金が行えるため、安心して利用できます。

このように、日本での生活と仕事の実態は、ベトナム人労働者にとって多くの魅力と利点があります。労働環境の良さや充実した社会保険制度、高い給与水準などが、彼らの生活を支えています。

ベトナム人労働者の特徴と強み

勤勉さと向上心

ベトナム人労働者は、勤勉さと向上心がある人が多い傾向にあります。

ベトナムは古くから儒教の教えが浸透している国であり、真面目に働くことが尊いとされています。特に日本の職場環境では、時間厳守や細部への注意が求められるため、(他の途上国に比べ)ベトナム人の勤勉さは大いに評価されています

また、現状に満足せず自己成長を重視し、新しいスキルや知識を積極的に学んで常により良い環境を求める姿勢も強みの一つです。

手先の器用さと技術力

ベトナム人労働者は、手先の器用さと技術力を持っています。

特に製造業や建設業など、精密さが求められる分野でその能力が発揮されます。細かい作業を正確にこなす能力を持つベトナム人は、日本の高品質な製品作りに向いていると言えます。ベトナムでは、繊細な工芸品をはじめ、メーカーのメカニックでなくてもバイクや家電の修理ができる人が多くいます

さらに、技術の習得が早く、新しい機械や技術にも迅速に適応できるため、企業にとって貴重な人材となっています。

日本語能力とコミュニケーションスキル

日本で働くベトナム人労働者の多くは、日本語能力を高めるために努力しています。

日本語のコミュニケーションスキルが向上することで、職場での意思疎通がスムーズになり、チームワークも向上します。また、日本の文化や習慣を理解し、適応することで、職場での信頼関係を築くことができます。

このように、ベトナム人労働者はその勤勉さ技術力、そしてコミュニケーションスキルを活かして、人手不足の日本で大いに活躍しています。

日本で働く際の課題と対策

就労ビザと在留資格の取得

日本で働くためには、適切な就労ビザと在留資格の取得が不可欠です。

しかし、手続きは複雑で時間がかかることが多く、申請者にとって大きな負担となります。対策としては、専門のビザコンサルタントや弁護士のサポートを受けることが有効です。また、企業側も労働者のビザ取得を支援する体制を整えることで、スムーズな手続きを実現できます

職場での文化的な違いと適応

日本の職場文化は、ベトナムとは大きく異なる点が多いです。

例えば、上下関係の厳しさや、時間厳守の重要性、安全や衛生に関する意識などが挙げられます。これらの違いに適応するためには、事前に日本の文化やビジネスマナーを学ぶことが重要です。

企業側も、外国人労働者向けの研修プログラムを提供することで、文化的なギャップを埋める努力が求められます。

失踪問題とその背景

近年、ベトナム人労働者の失踪問題が増加しています。

これは、劣悪な労働環境や低賃金が原因となっている場合が多いです。対策としては、労働条件の改善や、労働者の声を聞くための相談窓口の設置が必要です。また、労働者自身も、信頼できる仲介業者を通じて就職先を選ぶことが重要です。

これらの課題に対して、労働者と企業が協力して対策を講じることで、より良い労働環境を築くことができます。

まとめ

ベトナム人が日本で働く理由として、経済的なメリット、教育とスキル向上、文化的な魅力が挙げられます。彼らは勤勉さや技術力、日本語能力を活かして、自分と家族のため、そして日本の会社のために働いています。

しかし課題も存在します。今後、ベトナム人労働者の増加に伴い、企業側のサポート体制の強化や労働環境の改善、ベトナム人のさらなる教育が期待されます。これにより、日本側が安心して受け入れ、ベトナム人労働者がさらに安心して働ける環境が整い、日越両国の経済的・文化的な交流が一層深まることが期待されます。

この記事が皆様のお役に立てば幸いです。

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