”ベトナム語を独学で学ぶ効果的な勉強方法が知りたい”
”でも全く未知の言語をどうやって習得したらいいんだろう”
筆者はベトナム語学習歴18年、ベトナム在住歴8年、現在ホーチミンで独立開業し、ベトナム人相手に社員教育や交渉を行っています。
しかし初めは、ベトナム人にあっても挨拶しかできない、何を言われているか聞き取れない、発音練習で喉が痛くなる、など苦労の連続でした。
壁、また壁でした。
言語の勉強法を探していた時に、言語学者ハリー・コットン博士の言語学習法を知りました。博士はベトナム語やベトナム語の学習について教えていませんが、どんな言語でも独学でマスターする最速の勉強方法を教えていました。
その中からベトナム語の独学に特に役立つ点を、ここにシェアしたいと思います。
ベトナム語を独学で学ぶ10のステップ
- 目的を明確にする
- 文字の読み方を覚える
- ベトナム語の6声調を覚える
- 簡単なフレーズを覚える・すぐ使う
- ベトナム語の発音トレーニング
- ベトナム語のテキストを最短で読み通す
- ベトナム語教材を徹底的に音読する
- 最小単語で最大の結果をえる
- 自分の身の周りのものを全てベトナム語にしてみる
- すきま時間はベトナム語の音声や動画を聞く
1.目的を明確にする
時間とコストをかけてベトナム語を勉強するからには、誰でも目的があるはずです。
”ベトナム人の友達とコミュニケーションをとりたい”
”ベトナム人の彼女・彼氏を笑わせたい”
”ベトナム生活を楽しみたい”
”ベトナムに移住したい”
などベトナム語を勉強する目的があるはずです。それを強く、強ーく持ってください。ペラペラとベトナム語を話して目的を達成しているところを、イメージしましょう。現実になったかのように想像し、ニヤニヤしてみてください。
目的がクリアであるほどモチベーションを保ちやすいです。
2.文字の読み方を覚える
独学でベトナム語を勉強するためにベトナム語のテキストを1冊用意しましょう。
様々な教本がありますが、独習する場合は音声付きの教材がおすすめです。
なぜなら「ベトナム語は発音が命」だからです。
テキストを用意したら、まず文字の読み方から覚えましょう。
ベトナム語はアルファベットを使いますが、文字が29種類あります。(英語は26種類)
Aが3種類、Dが2種類、Eが2種類、Oが2種類、Uが2種類。Phという組み合わせがあります。J、F、W、Zは使用しません。
A | Ă | Â | B | C | D | Đ | E | Ê | G |
H | I | K | L | M | N | O | Ô | Ơ | P |
Q | R | S | T | U | Ư | V | X | Y |
アルファベットなのでとっつき易いですよね。しかし残念ながら、ローマ字のように読んでも全く伝わりません(泣)。
このステップの勉強方法のコツ
まず文字を覚えてベトナム語になじみましょう。
この段階ではベトナム語の母音や子音について細かい発音練習をしません。それで、なんとなく聞こえた発音をモノマネするだけでOKです。
3.ベトナム語の6声調を覚える
ベトナム語は声調が6つあります。私たちに日本人には全く同じように聞こえますが、ベトナム人はクリアに聞き分け、意味を使い分けています。
例えば同じMa(マー)でも下記の通り、声調によって全く意味が異なります。筆者はNgọcさんという女性の名前の声調を間違えて、Ngốc (ばか)と読んでしまい、困った顔をされました(しかも連呼した)。
Ma | おばけ |
Mà | しかし |
Má | ほほ、母 |
Mả | 墓 |
Mã | 馬 |
Mạ | 苗 |
このステップでの勉強方法のコツ
ベトナム語の声調を耳に擦り込ませましょう。
文法や語彙の勉強と同時に行うと混乱するので、声調の練習だけに集中する時間をとりましょう。
傾向として、ベトナム語の語彙は2語セットで構成されることが多いです。そのため2音節の単語セットで身につけると、ベトナム語らしい声調の高低がつかみやすいです。自分が発音しやすい単語の組み合わせを見つけましょう。同声調の2音節単語が登場したら、それと同じイントネーションで話すようにすると上手くいきます。
マネすることが一番の近道です。
この時点では、発音や語の意味は置いておいて、ハミングでメロディを奏でるようにしてみると良いかもしれません。少し極端なぐらいしてみてください。
ある程度つかめてきたら、ベトナム人ネイティブに聞いてもらいましょう。自分の声を録音して聞いてみるのもおすすめです。同じように上がり下がりしていますか?
ベトナム人の会話を聞いていると「音楽みたい」に聞こえます。声調(音の高さ)は、1音というよりも2音1セットと考えるとわかりやすいという人もいます。
例えば、ドレミファソラシドの音階で、平声はソ、降声はソからミ、昇声はミからソなどです。楽器をしている人が習得が早いのはそのためかもしれません。
4.簡単なフレーズを覚える・すぐ使う
目的を達成するのに役立ちそうな10-20のフレーズを覚えてください。
完璧にマスターしてから話そうとすると言語学習が苦行になります。あいさつなど、簡単でよく使うフレーズを自由に覚えてみましょう。
そして覚えたことを、使ってみましょう。自分の言っていることが通じた!という感動、達成感が何よりのモチベーションになります。
このステップでの勉強方法のコツ
音から入るようにしましょう。
文字を追って読もうとすると自己流になってしまうので、耳で聞こえたまま口から出してみましょう。
選んだフレーズをひたすらリピート再生して1週間ぐらい聞いて、繰り返してみましょう。ある瞬間、聞き続けていたフレーズが、口から出てくるようになります。
音から記憶するのは、赤ちゃんが言葉を覚えるのに似ていますよね。
5.ベトナム語の発音トレーニング
母音のトレーニング
ベトナム語で一番大切で一番難しいのは発音です。特に母音を正しく発音しわけることが、私たち日本人にとってポイントになります。
ベトナム語の母音は11種類あります。特にA、Ă、Âの違い、O、Ô、Ơの違い、U、Ưの違いによく注意しましょう。よーく聞いてそのままの音を出せるようになりましょう。
A | a |
Ă | ă |
 | â |
E | e |
Ê | ê |
I(Y) | i(y) |
O | o |
Ô | ô |
Ơ | ơ |
U | u |
Ư | ư |
「ちょっとぐらい間違っても通じるのでは??」
残念ながら通じないんです。Maだけでも6つの声調に対応して6つの意味があります。A、Ă、Âも含めたら18通りの意味があります。ベトナム人は「18語のうちどれなの?」となってしまいます。
ちょっとした口の開き方、音を出す場所の違いで、ベトナム人にとっては全く別の音として認識されてしまいます。
このステップでの勉強方法のコツ
このステップではベトナム語の母音を正しく発音することに集中します。母音を正しく発声するには、口の開き方と音を出す場所が重要です。
テキストに絵がありますので、口の開き方と音を出す場所を意識してください。テキストの音声を何度も聞いて、真似してみましょう。
自分では正しい音か判断できないので、ベトナム人にチェックしてもらいます。
日本語には声調がない(正確には上がる下がるのみ)のため、1〜2ヶ月は「これでいいのかな?」という感じかもしれません。ベトナム人にチェックしてもらいますが、
自分「マー」
ベトナム人「違う!」
自分「マー」
ベトナム人「違う!マー」
自分「マー」
ベトナム人「そう!それ!」
自分「(どう違うんだろう…?)」
しかしだんだん分かってきますので、とにかくマネて発音し続けてください。
子音トレーニング
ベトナム語の子音の発音をトレーニングします。
子音には頭子音と末子音があります。
頭子音とは、頭につける子音のことです。日本語もKにAがついてKA(か)と発音する。おなじ要領なので簡単です。
しかし”T”と”TH”など、日本人にとって区別が難しいものがいくつかあります。違いに気をつけて発音しましょう。
違いが見分けにくい頭子音の一例
T | TH |
V | B |
R | L |
CH | TR |
X | S |
末子音とは、語尾にくる子音で、誤解を恐れず言うなら、発音しません。発音しないけど、音を出す準備をして途中で止める、という感じです。
これもテキストをみながら、子音を真似して発音してみます。ポイントは1回につき1つの部分に集中して練習することです。母音、頭子音、末子音そして声調全てを同時にトレーニングしようとすると混乱してしまいます。(もちろん最終的には全てを同時にするんですが…)
6.ベトナム語のテキストを最短で読み通す
テキストを入手したら、時間をかけずに読み通しましょう。
時間をかけすぎると、基礎的な内容で飽きてしまい、挫折してしまいます。
「だいたいベトナム語の文や音の感じがわかった」
それくらいで大丈夫ですので、気軽に読み終えましょう。読み終えると次のような効果を期待できます。
- ベトナム語の発音と文法を大まかに把握する
- 基本的な、好きなフレーズを覚える
- 読み切ったという実感がする
「読み切ったという実感」がモチベーション維持につながります。
さらにテキストには基礎的な会話が充実していますから、読了しているとフレーズを探す時に辞書のような使い方ができます。
このステップでの勉強方法のコツ
音声が付いているなら、音声のペースに従って学ぶと集中力を保ちやすいです。
音声を聞くときは、ベトナム語を指でなぞってください。音と文字が結びつくようになるので、早く読めるようになります。
その後テキストの内容を、一緒に発音しながら読み通してください。「とにかく聞こえた通りに真似する」こと、「学んだ発音を意識する」ことで、発音の微調整が行えます。
【補足】ベトナム語ができる学習アプリ「Ling 外国語レッスン」の紹介*2024年6月追記
新しくベトナム語の学習に特化して学ぶことができるアプリ「Ling 外国語レッスン」が誕生されたようです。
※スタディサプリのように手持ちのスマホで気軽に基礎単語や文章を発音付きで学べます。
口コミ評判も上々なようですので、まずは7日間の無料お試しプランもあるので、気軽にインストールしてお試しください。
「Ling 外国語レッスン」URL:https://ling-app.com/jpn/ベトナム語を学ぶ/
*インストール後、学びたい言語一覧より「ベトナム語」を選択すれば設定完了です。
※他にも「duolingo」というベトナム語学習アプリなどもあるようですので、色々チェックしてみるといいでしょう。
7.ベトナム語教材を徹底的に音読する
音読とは、テキストを声に出して読むことです。
音読は単語、発音、文法を一気に習得できる最高の学習方法です。
このステップでの勉強方法のコツ
ベトナム語のテキストを下記のステップで朗読・音読筆写(かき写すこと)をすると、さらに効果的です。
- テキストを見ずに音声を聞く
- 聞き取れた部分を書き出してみる。カタカナで書き出しても良い。
- 音読する(最低5回)
- 音読筆写する(最低5回)
- 空で言ってみる。覚えていなければ音読筆写をもう一度行う
読む際は、発音を意識します。1回目は母音、2回目は頭子音、3回目は末子音、4回目は声調というふうに、重点箇所を変えながら、集中して読みます。
するとステップ5の段階では、口から出てくるようになります。
英語の同時通訳の草分けで「同時通訳の神様」とよばれる國弘正雄さんは「音読が単語、発音、文法を一気に習得できる最高の学習方法」と言っています。
これはベトナム語学習にも当てはまります。
8.最小単語で最大の結果をえる
語彙が大切なのはもちろんですが具体的にどれくらい必要でしょうか?実は…
850単語(+専門の用語)があれば全てのことを表現できる
と言われています。なんだか頑張る気持ちが出てきませんか?しかもそのうち、100単語が会話全体のなんと約80%です。ということは、まず100単語覚えるだけでも、かなりのことが言えるのです(使いこなせれば…ですが)。
まず最小の「装備」を身につけましょう。
このステップでの勉強方法のコツ
この段階では細かい表現は求めてはいけません。
「うれしい」、「楽しい」、「最高」、「ほっこり」、「満足」、「いとおかし」…
全て“Vui”(楽しい)でOKとしてください。
もどかしいですが、それが自分の言語力なので受け入れます。黙り込んでしまうより表現し続けることが大事です。
黙り込んでしまうと、会話が続きません。
会話が続かないと、相手も飽きてしまいます。
それなら知ってる単語で話を続ける方が、自分も楽しいし、相手も安心します。
徐々に850単語にも挑戦していきましょう。
初学時に、形容詞を20語くらい覚えたことが私にとってすごく役立ちました。
特に、感情を表す言葉(うれしい、悲しい、元気、疲れた、好き、嫌い、おいしいなど)を覚えると会話がはずみます。
”Ngon quá! Vui quá!”(とってもおいしい!うれしい〜!)
それを聞いてベトナム人は「ふむふむ、言葉は話せないがうれしそうだ」と感じて心が通じます。
ぜひ形容詞をまず覚えましょう。
9.自分の身の周りのものを全てベトナム語にしてみる
単語を増やすのに良い方法の一つは、自分の身の回りのものを全てベトナム語にすることです。
例えば、自分の寝室、目につくものを全てベトナム語で書き出し、貼り付けましょう。毎日思い出していると、見なくても言えるようになります。
次は、キッチン、トイレと広げていくとだんだん単語数が増えていきます。
このステップでの勉強方法のコツ
思い出そうとする過程が記憶を強化します。それで、毎日何回もモノを指しながら発音してみましょう。
名詞の単語数が増えたら、次は動詞です。
例えば、「イス」を覚えたら、次に「イスに座る」。
これをチャンク(コロケーション)と呼び、この組み合わせが増えると会話力が爆発的にUPします。
10.すきま時間はベトナム語の音声や動画を聞く
ベトナム語の音声や動画を毎日聞くことです。例えば…
すきま時間にYouTubeでベトナムのニュースやドラマを聞く
通勤時、車で興味のある分野のベトナム語を聞く
聞き流すだけで、内容を理解しようとしないでも大丈夫。ベトナム語のリズムと音声に慣れるためにとにかくたくさん聞くことが役立ちます。
私のおすすめは、ベトナム人の食べ歩き系や旅行系の動画です。
このステップでの勉強方法のコツ
多聴とディクテーションがベトナム語学習を加速してくれます。
多聴は、とにかくたくさんのベトナム語に触れることです。ニュースキャスター、子供、若い人、高齢者、声の高い女性などなど、いろんな言葉に慣れることが目的です。
ディクテーションは、聞いた音をすぐ口に出してついていく練習です。内容がわからなくても、全部言えなくても全然問題ありません。
「なんかこの組み合わせの音をよく聞くな」ぐらいでOK。
その後勉強した時「あ〜そういう意味だったのか!」と理解できます。さらに聞き慣れているのですぐ使うことができます。
耳から入ったベトナム語は最強です。
まとめ
いかがでしたか。ベトナム語は独学で習得できます。
ベトナム人は以前より身近にいますし、学習ツールも増えています。
独学でも効果的な勉強方法を行えば、ベトナム語を習得することが可能です。
短時間でも良いので、とにかく毎日継続することがベトナム語習得の秘訣です。
- 目的を明確にする
- 文字の読み方を覚える
- ベトナム語の6声調を覚える
- 簡単なフレーズを覚える・すぐ使う
- 母音の発音トレーニング・子音の発音トレーニング
- ベトナム語のテキストを最短で読み通す
- ベトナム語教材を徹底的に音読する
- 最小単語で最大の結果をえる
- 自分の身の周りのものを全てベトナム語にしてみる
- すきま時間はベトナム語の音声や動画を聞く
あとは、ネイティブスピーカーと会話をする機会を作るとベトナム語がどんどん上達します。
この情報が皆さんのベトナム語学習のお役に立てば幸いです。